嘘
「夏目。」
「なに?」
夏目の腕をほどくと、代わりにその左手を握る。
「ちょっと暑くなってきたからさ、これでもいいだろ。
心配なら、逃げないようにちゃんと握ってろよ。」
「・・・うん。」
スタジアムまで手を繋いで歩く。
何とかキックオフまでには間に合いそうだ。
死神はどのタイミングで俺の命を奪うのかな。
スタジアムに入った瞬間か、試合が始まった瞬間か。
どうせなら試合が終わるまで待ってくれないかな。
・・・ここまで頑張ってきたけど・・
・・・俺の命も・・・あとちょっとか。
第8話 完