聖なる夜に来る待ち人は
マンションの入口まで来ると寺川くんがもう待っていた。


「おはよう!迎えに来てくれてありがとう。待たせちゃった?ごめんなさい。」


慌てて駆け寄ってそう声を掛けると。


「おはよう、八雲。そんな待ってないから大丈夫だ。ほら、鞄こっちに入れるから後ろのって。」


そう声をかけられて鞄を預けて自転車の後ろに回って乗った。

「じゃあ、漕ぐぞ。」
「はい!」


そうして動き出した自転車で学校に向かう。


誰かの自転車の後ろに乗るとか小学生ぶりの出来事とこのかなりの近い距離感に戸惑う。


「今朝、ちょっと雰囲気違うね。髪型も似合ってて可愛いよ。」

そんな声が聞こえて頬が赤くなるのがわかる。
マフラーに顔をうずめてなんとか隠した。
照れる、恥ずかしい。
でも気付いてくれたのが嬉しい。


「ありがとう。今日は昨日より長く出掛けるからちょっと綺麗にしとくべきかなって、ね・・・。」


だんだん小さくなって言った私の言葉を寺川くんは聞き逃さなかった。


「そっか、俺とのお出かけ楽しみにしててくれたんだな。よし!じゃあいっぱい遊ぼうな!」

信号で止まったところで振り返り笑顔で言われて、赤くなる顔が止まらないのを自覚しながらも返事を返す。


「うん、楽しみだよ!今日はどこに行くの?」

「いろいろ、かな。気分で好きに行けるだろ。自転車だしな。」

そう言ってポンポンと頭を撫でると信号が変わり再び寺川くんは自転車を漕いでくれている。


朝からこんなやりとり、そろそろ頭がショートするかもしれない。

放課後まで持つかな、私。
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