配信教室
男たちは俺と同年代くらいで、1人の男を取り囲んでいる。


もうすでに暴力は始まっていたようで、取り囲まれた男はピクリとも動かず倒れたままだった。


もしかしたら気絶しているのかもしれない。


相手の人数は10人くらいはいるかもしれない。


さすがにこの中に飛び込んでいく勇気なんてなかった。


後ろから追いかけて来た沙希がその光景を見て息を飲む。


俺は彼らに気が付かれないように建物の壁に身を隠した。


警察に通報するのがよさそうだ。


そう思うけれど、さきほどの対応を見たばかりだから気が進まない。


だけど《マッドマン・ムービー》とは関係ないことだから、きっと駆けつけてくれるだろう。


そう思い直してスマホを取り出した、その時だった。


「動画ちゃんと撮ってるか?」


「もちろんだ。これで賞金は俺たちのものだな」


「まだまだ、こんな動画じゃ無理だって。Uの動画には負ける」


そんな会話が聞こえて来て、俺は動きを止めた。

< 107 / 225 >

この作品をシェア

pagetop