配信教室
本当は家に帰るまで待てないくらいだ。


近くの公園のトイレに入って動画を見ようと思った時も、１回ではない。


けれど、一度動画を見始めると夜まで止まらなくなってしまうから、どうしても家に帰らなければならないのだ。


いっそ学校で寝泊まりしたいくらいだ。


ようやく下駄箱までたどり着いた俺は靴を履きかえるのだってもどかしく感じられるくらいだった。


それなのに、こんな時に限って声をかけられる。


「澪。もう帰るの？」


そんなの見ればわかるだろうが。


心の中でそう思ったが、それが沙希の声だったので俺は動きを止めていた。


沙希は俺を追いかけて来たのか軽く息を切らしている。


「なんで？」


そう質問をすると、沙希は少しだけ頬をピンク色に染めた。


俺の勘違いじゃなければ沙希は照れているように見える。


その態度に俺はたじろいた。


沙希のこんな顔を見るなんて夢にも思っていなかった。
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