鬼の生き様


 皆、新しい土器を額に括り付け、暫く休息が与えられた。
一同は、紅白入り混じり、仲良く談笑している。

「沖田くん、強くなりましたね」

山南は総司に声をかけた。

「あはは、ようやく勝てましたね。
見事だったでしょ、三段突き」

よほど剣の才でない限り編み出せない技だ。
山南はコクリと頷いた。

(やはり総司は強すぎる)

歳三は総司を見て、恐怖に似た何かを覚えた。

「あっ、平助!来てたんだ」

 総司は平助に気がつくと手を振った。
平助も思わず微笑んで、手を振り返す。

「藤堂くんも参加していけば良い」

勇は平助に声をかけた。
「良いんですか?」
平助は思わず目を輝かせた。

「勿論だとも」

 こうして二試合目は永倉と平助も参加する事となった。
総司は改めて鉦役として回されたが、一回戦目で山南に勝てたのが嬉しいのか、拗ねた様子はもう見せなかった。

「しかし、近藤さん。
二人増えるとなれば一人、公平ではない」

山南はそう言うと、「確かにそうだな」と歳三は言った。

「俺様がいるじゃねえかよ」

「誰だ」

襤褸の着流しの男が姿を現した。
なかなかの色男であり、涼しげな男らしい顔をしているが、天然理心流の門人ではないのは明らかである。


「ただの通りすがりの者さ。
なんか面白え事やってんなァって思って見ていたのよ」

「氏素性の知れん者が出る幕ではないぞ」

永倉は大男にそう言うと、竹刀を構えた。

「待て待て。
俺の名前は原田左之助、年は天保十一年生まれ。
生まれは伊予松山で中間の頃に脱藩。
これでいいだろ?
楽しそうな祭りに俺も仲間にいれてもらいてえんだよ」

「流派は?どこかの回し者か?」

歳三は鋭い目付きで原田左之助と名乗る男を睨みつけた。

(甲源一刀流の回し者か何かだろう)

 歳三は武州小沢口で発足した甲源一刀流を異様に嫌っている。

「種田宝蔵院流槍術を大坂で学んだ。
三度の飯より女が大好き、俺の腹は金物の味を知っているんだぜ?腹に一文字で、家紋もほらよ」

と丸に一つ引きの家紋を見せながら、服を脱いだ。
切腹の疵がある。

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