鬼の生き様
「土方くん!急いで道場へお集まりください」
山南のその語気には鬼気迫るものがあり、周囲がまったく見えていないようで、山口の存在にまるで気が付いていない。
「何があった?」
今まで、このような姿というのは見たことがない。
(まさか)
山口はその慌てぶりから、大刀を手に取った。
役人がここを嗅ぎつけ、集まってきたのだろうと思った。
「朗報です!」
山南はそう和かに微笑みながら言うと、ようやく山口の存在に気がつきみるみる顔が赤くなった。
「失礼。お客様がお見えになっているのを知らずに、ご無礼を…」
そう頭を下げたが、いつか見た顔だなと思い首をあげた。
「山口さんではないですか!」
「ご無沙汰しております。……その節はお世話になりました」
「まさか貴方とまたお会いするとは」
二人の再会を理解出来ずにいる永倉は、“朗報”
を一刻も早く皆に伝えたい様子で急かすように口火を切った。
「いやはや、このような醜態を晒してしまい申し訳無い。
私は、永倉新八と申します。
えぇ、挨拶はそれ程にして…。
山口さんとやらも剣を志す者とお見受けした。
是非道場へどうぞ」
山口は困惑しながらも、四人は道場へ向かう事となった。
道場は勇はもちろんのこと、総司、源三郎、平助、左之助。
そして総司の義兄であり門人である沖田林太郎が集まっていた。
林太郎は井上家の分家の生まれで、源三郎とは親戚である。
幼少の頃に総司の両親が亡くなり、幼い総司の代わりに実姉の沖田ミツの婿となり沖田家の家督を継いだのである。