鬼の生き様
「局長が芹沢さんと新見さんなら、副長は俺と山南でやらせて頂きます」
この副長職というものだけは譲れなかった。
歳三からしてみれば、芹沢の気分を浮かれさせる為に局長にするのは当然であったが、歳三の真の目的は副長にある。
局長には会津藩との連絡や隊の運営などの事務的な仕事を行ってもらい、隊士達の面倒は副長が見るつもりだ。
つまり隊士を手のひらで転がす事がしやすいのは副長という立場であり、試衛館寄りの隊士作りが出来るとふんでいた。
芹沢と新見はその目的に気が付いていない。
むしろ副長という“局長になれなかった男”という哀れみに近い思いのほうが強かった。
「そして副長助勤には今いる者達に役付させる」
「良いだろう…んっ?しかし金子の管理をする勘定方がいないな。
よし算術の得意な平間にそれを任せよう」
新見はそう言った。
勘定方をあてがわなかったのは、歳三の誤算であったが、算術が得意な者は試衛館一派には山南しか居らず、任せられるとしても平助だが、平助には向かないだろう。
平間重助は水戸一派の中でも温厚で、神道無念流の同門という事で野口健司と共に最近では永倉と仲良くなっていた。
『筆頭局長』
芹沢鴨
『局長』
近藤勇
新見錦
『副長』
土方歳三
山南敬助
『副長助勤』
沖田総司
永倉新八
斎藤一
井上源三郎
藤堂平助
原田左之助
平山五郎
野口健司
佐伯又三郎
『勘定方』
平間重助
そして、約束をした通り、名前を残すことにしなかった谷右京は、砲術に長けているということで紙面には残さないが『砲術師範方』という事となった。
共に上京してきた阿比留鋭三郎は病臥していた為に、名前は記載されていない。
「それでは明日、早速大坂へ向かおう。
大坂へはワシと新見、そして野口を連れて行くから、あとはそっちで決めておいてくれ」
芹沢はそう言うと、承知。と歳三と勇は立ち上がり座を外した。
これでようやく隊らしくなった。
さっそく歳三、勇、総司、永倉、そして芹沢、新見、野口は大坂へと下り、今橋にある平野屋五兵衛にて百両を借用した。