鬼の生き様


「芹沢も悪いぜ」

左之助はそう言い、向かいの八木邸を睨むように見た。
 
 芹沢は最近、八木邸に女を連れ込み共に暮らしているというのだ。
名前は、お梅といい、年の頃は二十二、三歳と若く、この女も愛嬌のあり垢抜けていて、なかなかの美人であった。

「でもなかなかお似合いではないか」

永倉はそう言うが、やれやれ、と左之助はため息を吐いた。

 お梅は京都西陣に生まれ、もともとは島原の茶屋にいた。
その後、太物問屋の菱屋太兵衛に身請けされ妾になった。

 その菱屋の妾が何故、芹沢のもとへといるのかというと、試衛館一派とは違い金回りの良い芹沢の金の沸きどころというのは、様々な商家に押し入っては強請りまがいな事をして小金を稼いでいた。
そのあぶく銭の“湧きどころ”の一つであったのが、菱屋である。

未払いのまま買い物をし、菱屋がたびたび催促しに行くのだが支払れる事はなかった。

しかし菱屋も芹沢の恐ろしさを知っている。

これ以上、催促することで芹沢たちが暴れる事を恐れた菱屋は、女ならばあたりも柔らかろうとお梅を催促へやったのだ。

はじめ何度かは芹沢に追い返されたが、ある日、借金の催促に来ると芹沢に部屋に連れ込まれ手ごめにされたのだ。

最初は嫌がっていたお梅も、そのうちに自分から芹沢の元へ通うようになり、気がつけば今では菱屋には戻らずに芹沢と生活を共にしている始末である。


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