鬼の生き様
歳三は自室に入ると、涙は頬をゆっくりとつたい、それから膝の上に落ちた。
一度流れた涙は、堰を切ったようにどっと溢れ出てきて後から後から込み上げてくる。
声を押し殺して泣いた。
『これがお前たちのやり方か。
汚い、士道というものはないのか。
あれほど武士に憧れてきたお前に、士道は無いのか』
──士道。
──武士。
こんな想いをするならば、いっそ勇に命じられた時に腹を切って死んでしまったほうがよかった。
しかし自分が死んでしまったら、芹沢鴨や新見錦、そして平山五郎の死は無駄になってしまう。
筆頭局長の芹沢鴨でさえも、断罪された。
歳三は紙を取り出し筆を取った。
『法度』
一.士道ニ背キマジキ事
一.局ヲ脱スルヲ許サズ
一.勝手ニ金策イタスベカラズ
一.勝手ニ訴訟取リ扱ウベカラズ
一.私ノ闘争ヲ許サズ
右条々相背キ候者 切腹申シツクベク候也
この禁令。
俗に言う『局中法度』は、烏合の衆でもある壬生浪士組の結束をより固める為に歳三が制定した。
そして、どんな身分の者でも入隊が入れる即ち、誰でも武士として扱うから、切腹は覚悟しろ。という非常に厳しい法度である。