鬼の生き様
およそ五尺六寸(約168cm)。
歳三と同じ背ぐらいの青年は、永倉と呼ばれた男に石田散薬を渡した。
「あれ?」
永倉の手には、新しい石田散薬と煤けた石田散薬がある。
「歳三さん?」
「惣次郎か?」
その背の高い青年は紛れもなく試衛館の門人、沖田惣次郎であった。
歳三と見つめ合う惣次郎は、しばらく驚きが隠せない様子で口をぽかんと開けて固まっている。
「…歳三さん!!」
「あー、うるせえな!
背ばっかりひょろひょろと伸ばしやがって!」
「若先生ー!」
惣次郎は居ても立っても居られずに、道場へと駆け出した。
「あんたが噂の歳三さんかい。
若先生や惣次郎から話はよく聞いてるぜ。
俺は永倉新八、今はこの試衛館道場で客分として生活をしているんだ」
永倉新八はそう言うと頭を下げた。
歳三は永倉の立ち姿を見てみると、隙がない。
なにせこの男は、神道無念流の本目録を十八の時に納めている。
この時まだ永倉は二十歳である。
「まぁ、立ち話もなんですから、入ってください」
永倉に言われるがままに歳三は試衛館に入っていった。