鬼の生き様
「あんたらも物好きだねェ」
「土方の旦那も、役者のような涼しい顔しながらも興味津々じゃないですか」
「永倉さんのいう通りですよ土方の旦那ァ」
惣次郎も永倉と共に悪戯好きそうな顔をしながら、ニヤニヤと様子を伺っている。
全くこいつら、と歳三は呆れ顔をしたが駕籠から降りてきたツネの姿を見て、三人は驚いた表情を浮かべた。
「醜女…」
歳三はポツリと呟いた。
二人は何も言えなかった、見た目は歳三の言う通りたしかに酷いのだ。
ましてや年が二十三歳と、当時にしてみればツネの年齢での結婚は行き遅れだと言われていた。
「なんで若先生はあの人を選んだんですかね」
勇はこれまで何度か見合いをしてきている。
惣次郎はツネの姿を見て、不思議そうに呟いた。
「金だよ金。
武家の娘となりゃ、コレは持ってる」
歳三は親指と人差し指をつけて丸を作った。
なるほど、という表情を惣次郎は浮かべたが、永倉はどうだろうかと言った。
「あの人は損得勘定で動く人ではないと私は信じている。
もっと深い理由があるはずだ」
その言葉を聞き、手のひらを返したように惣次郎は頷いた。
「若先生はきっと、守りを固めて攻めに転ずるように所帯を構えるのではないでしょうか。
きっと大先生の為に宗家五代目をのこし、国家の為に剣を振るうおつもりだと思います」
いつのまにやら源三郎は歳三達の後ろに立ち、ツネの様子を伺っていた。
「さすがは源さん、言うことが深い。
さすがは天然理心流免許皆伝の男…って源さんもご新造さんに興味あるのね」
惣次郎はそう源三郎をからかった。
源三郎は十三年ほどかけてようやく天然理心流、免許皆伝を録した。
しばらくし、いよいよ祝言が執り行われた。