君への心
エピソード1 二人の夢と手の届かない友人
「打ち上げました。仁藤海人、プロ初登板プロ初先発にしてプロ初勝利ー」
「海人、おめでとう」
「うん」
ここは慶應義塾大学野球部寮。ここであるプロ野球選手をテレビの前で見守る二人の男女がいた。その名は新垣奏と、金井潤。二人は高校からの知り合いで、潤は捕手として甲子園にも春夏合わせて3回出場し、2回全国制覇も達成していた。けど、潤はプロには行けなかった。何故なら一緒にバッテリーを組んでいたエース、仁藤海人がプロに入ったからだ。彼は5球団競合で東京ミルクに入った。だから潤はプロに行けなかったわけだ。一方の奏は高校でマネージャーとして、甲子園に2回行って、1度、全国制覇という夢を果たしたが、奏の高校からはプロのオファーが来ず、また、奏自身も自分はこれからどうしていくかが分からず途方に暮れていた。進路も、これからのことも。今は慶應義塾大学野球部のマネージャーをしているが、それはプロに行くという夢を持つ潤を応援するためだった。何故なら奏は潤が好きだからだ。元々、奏は海人が好きで高校2年の時に、告白をした。しかし、
「好きな人がいるから。ごめん」
と、振られてしまった。悲しさで練習後、誰もいないグラウンドで一人で泣いている奏に、潤は慰め、そして、その日、ずっと一緒に居てくれた。そんな潤の優しさに奏は惚れてしまったのだ。それから3年。まだ、奏は潤に告白もできなかった。周りはもう付き合っちゃえばいいのにと言われるが告白の勇気も出なかった。
「しかし、気持ちは複雑だな。活躍して嬉しい半分、あんなに身近にいた海人が今は俺たちの手の届かない所にいるみたいだ」
「潤は特に身近にいたからね。半年前までバッテリーを組んでいて、1ヶ月前の卒業式まで仲良くしてたからね」
「ああ。ずっと仲がいい、いわば親友みたいな存在だった」
「いいよね。そんな存在がいるって」
「奏だって、奈々香と仲良いじゃん」
奈々香とは高校の時、一緒にマネージャーをしていた同い年の友達で、今は海人が溺愛する彼女だ。
「そんなことないよ。元々、ライバルだったわけだし。振られてから仲良くなったけど、まだそれから1年半くらい。まだ親友と言うには早い気がする」
「そっか」
「うん」
「今日のヒーローは投打の主役のお二人に来ていただきました」
そんなこと言ってると海人のヒーローインタビューが始まった。海人と一緒に上がったのは決勝スリーランを放ったココンティンとかいう外国人選手だ。
「まずは仁藤投手にお話を聞いていきたいと思います。ナイスピッチングでした」
「ありがとうございます」
「プロ初登板プロ初先発でプロ初勝利という壮絶なデビューを果たしました。どのような気持ちですか?
「物凄い嬉しいです。今日はプロ初登板プロ初先発ということで、家族も見に来てくれているのでその前で一勝出来てとても嬉しいです」
「8回被安打3無失点という内容でしたがマウンドに上がる際、どのようなことを考えていましたか?」
「プロの洗礼を浴びせられないかビクビクしていましたがとにかく腕を振って自分らしいピッチングを心掛けようと意識してマウンドに上がりました」
「そして好投しました。結果が出ましたね」
「はい。頑張れました」
「それではココンティン選手と変わっていただいて…」
「海人、家族が来てるって言ってたよね。それって奈々香さんってことかな。それとも両親ってことかな」
「それかどっちもって可能性もあるけど…どういう意味なんだろうな」
「うん」
そして、ココンティン選手のインタビューが終わり…
「それじゃあ仁藤選手は自己紹介と抱負を述べて下さい」
「東京ミルクにドラフト1位で入団した仁藤海人です。俺は中学の時から二刀流と呼ばれ、慕われてこの世にいるのですが、それでも、俺はスタミナはないし、守備力もない、ただ強肩で、いいピッチングをするだけの投手です。けど、俺は本当にダメなやつだけど、支えてくれる仲間、監督、家族がいるからここまでやって来ています。俺のプロ野球人生がここから始まって行く。そう思っています。弱点も克服し、チームに貢献していきます。これからもよろしくお願いいたします」
海人は高校の時からネガティブで、高校の時、こんなことを言っていた。
「俺はこのチームの中で一番センスがない。だから誰よりも練習するんだ」
と。海人はとんでもないくらいネガティブだけど、ネガティブだからこそ、誰よりも練習した。放課後の練習後も下校時間になり、先生に注意されに来るまで毎日練習をしていた。いつも海人と潤は怒られていたなぁ。練習のしすぎで。
「ネガティブだからこそ、誰よりも練習する。だからこそ、今、プロで活躍できてるのかもな」
「うん。その後、家に帰っても練習してたみたいだからね。けど、勉強の方も手を抜かずに頑張ってたからね」
「ああ。最後まで学年1位全国3位。プロ落ちてたら東大行けてたってもう神かよ」
「野球も出来て、頭良くて、イケメンで、優しくて、完璧なやつだからね」
「ああ。けど、あんなやつだからこそ、自分を高めれるから。そして、完璧な彼を支えられるのは結局、奈々香だけだったのかもな」
「私も振られた時そう思った。結局のところ海人と奈々香はお似合いだったということだね」
「ああ」
「海人、おめでとう」
「うん」
ここは慶應義塾大学野球部寮。ここであるプロ野球選手をテレビの前で見守る二人の男女がいた。その名は新垣奏と、金井潤。二人は高校からの知り合いで、潤は捕手として甲子園にも春夏合わせて3回出場し、2回全国制覇も達成していた。けど、潤はプロには行けなかった。何故なら一緒にバッテリーを組んでいたエース、仁藤海人がプロに入ったからだ。彼は5球団競合で東京ミルクに入った。だから潤はプロに行けなかったわけだ。一方の奏は高校でマネージャーとして、甲子園に2回行って、1度、全国制覇という夢を果たしたが、奏の高校からはプロのオファーが来ず、また、奏自身も自分はこれからどうしていくかが分からず途方に暮れていた。進路も、これからのことも。今は慶應義塾大学野球部のマネージャーをしているが、それはプロに行くという夢を持つ潤を応援するためだった。何故なら奏は潤が好きだからだ。元々、奏は海人が好きで高校2年の時に、告白をした。しかし、
「好きな人がいるから。ごめん」
と、振られてしまった。悲しさで練習後、誰もいないグラウンドで一人で泣いている奏に、潤は慰め、そして、その日、ずっと一緒に居てくれた。そんな潤の優しさに奏は惚れてしまったのだ。それから3年。まだ、奏は潤に告白もできなかった。周りはもう付き合っちゃえばいいのにと言われるが告白の勇気も出なかった。
「しかし、気持ちは複雑だな。活躍して嬉しい半分、あんなに身近にいた海人が今は俺たちの手の届かない所にいるみたいだ」
「潤は特に身近にいたからね。半年前までバッテリーを組んでいて、1ヶ月前の卒業式まで仲良くしてたからね」
「ああ。ずっと仲がいい、いわば親友みたいな存在だった」
「いいよね。そんな存在がいるって」
「奏だって、奈々香と仲良いじゃん」
奈々香とは高校の時、一緒にマネージャーをしていた同い年の友達で、今は海人が溺愛する彼女だ。
「そんなことないよ。元々、ライバルだったわけだし。振られてから仲良くなったけど、まだそれから1年半くらい。まだ親友と言うには早い気がする」
「そっか」
「うん」
「今日のヒーローは投打の主役のお二人に来ていただきました」
そんなこと言ってると海人のヒーローインタビューが始まった。海人と一緒に上がったのは決勝スリーランを放ったココンティンとかいう外国人選手だ。
「まずは仁藤投手にお話を聞いていきたいと思います。ナイスピッチングでした」
「ありがとうございます」
「プロ初登板プロ初先発でプロ初勝利という壮絶なデビューを果たしました。どのような気持ちですか?
「物凄い嬉しいです。今日はプロ初登板プロ初先発ということで、家族も見に来てくれているのでその前で一勝出来てとても嬉しいです」
「8回被安打3無失点という内容でしたがマウンドに上がる際、どのようなことを考えていましたか?」
「プロの洗礼を浴びせられないかビクビクしていましたがとにかく腕を振って自分らしいピッチングを心掛けようと意識してマウンドに上がりました」
「そして好投しました。結果が出ましたね」
「はい。頑張れました」
「それではココンティン選手と変わっていただいて…」
「海人、家族が来てるって言ってたよね。それって奈々香さんってことかな。それとも両親ってことかな」
「それかどっちもって可能性もあるけど…どういう意味なんだろうな」
「うん」
そして、ココンティン選手のインタビューが終わり…
「それじゃあ仁藤選手は自己紹介と抱負を述べて下さい」
「東京ミルクにドラフト1位で入団した仁藤海人です。俺は中学の時から二刀流と呼ばれ、慕われてこの世にいるのですが、それでも、俺はスタミナはないし、守備力もない、ただ強肩で、いいピッチングをするだけの投手です。けど、俺は本当にダメなやつだけど、支えてくれる仲間、監督、家族がいるからここまでやって来ています。俺のプロ野球人生がここから始まって行く。そう思っています。弱点も克服し、チームに貢献していきます。これからもよろしくお願いいたします」
海人は高校の時からネガティブで、高校の時、こんなことを言っていた。
「俺はこのチームの中で一番センスがない。だから誰よりも練習するんだ」
と。海人はとんでもないくらいネガティブだけど、ネガティブだからこそ、誰よりも練習した。放課後の練習後も下校時間になり、先生に注意されに来るまで毎日練習をしていた。いつも海人と潤は怒られていたなぁ。練習のしすぎで。
「ネガティブだからこそ、誰よりも練習する。だからこそ、今、プロで活躍できてるのかもな」
「うん。その後、家に帰っても練習してたみたいだからね。けど、勉強の方も手を抜かずに頑張ってたからね」
「ああ。最後まで学年1位全国3位。プロ落ちてたら東大行けてたってもう神かよ」
「野球も出来て、頭良くて、イケメンで、優しくて、完璧なやつだからね」
「ああ。けど、あんなやつだからこそ、自分を高めれるから。そして、完璧な彼を支えられるのは結局、奈々香だけだったのかもな」
「私も振られた時そう思った。結局のところ海人と奈々香はお似合いだったということだね」
「ああ」
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