残り100日の私と大好きな君

…でも現実は"恋"なんて言ってられるほど、甘いものではなかった。





「咲楽ちゃん~、回診ですよ」

そう言って、看護師さんがカーテンを開ける。

「咲楽ちゃん、今日は、診察をしてから、透析を始めるからね。…少し痛いけど、咲楽ちゃんなら頑張れるよ。」

そうお医者さんは言うけど、私はもう既に涙目。

昔から、病気のせいで何年も透析をしていた。

少し症状が良くなったから、ここ数年は普通に生活していたのに…ついこの間、病気のせいで倒れてしまった。

そこから、入院が決まり、透析治療の再開も決まった。

…しかも、前のやつはもう使えないらしく、今度は前よりも辛い透析になるとか……

看護師さんが持ってきたトレーには、太い針とチューブ、そして透析の機械もあって、それが私をより一層怖くさせる。

「はい。診察終わり。問題ないから、透析入れよっか。」

「ぃゃ…………」

今にも消え入りそうな声で私はそう言う。

だけど、その声はお医者さんには届いていなく、ガッシリと右腕をホールドされた。

「い…いやぁ」

今度は、少し大きい声で言うと、お医者さんは私の方をチラッと見てから、呆れたような顔で

「大丈夫だから」

と言った。

嫌だ……

絶対、痛いもん…

前に、入院していた時も、隣の人が辛そうにしてたから知ってる。

……何回も、泣き声を聞いたから知ってる。

…嫌だ……

やめて…

…助けて…………

すると、私の左のカーテンが少しだけ開いた。

「咲楽ちゃん、頑張れ。僕、手握っててあげる。」

そう小さく聞こえたあと、私の左に温もりが伝わった。

「痛かったら、僕の手ギュッてしていいから。」

どうやら、看護師さんと、お医者さんには聞かれていないようで、2人はちゃくちゃくと、準備を進める。

「はいはい、じゃあ刺すよ」

そう言って、私の右腕に鋭い痛みが走る。

「いっっっ!!!!」

私の両目からは大粒の涙が零れた。

「痛ぃ……痛いよぉ」

「はいはい、大丈夫大丈夫。泣かないでー」

お医者さんは、感情のこもっていない声でそう言って、まだ針を進める。

私は、怖さと痛さで奏汰くんの手をギュッと握った。

「がんばれ」

その小さな声に励まされて、私は頑張った。

数分後、体に機械が繋がれて、一旦辛いことは終わり。

だけど、看護師さんと、お医者さんが出ていった部屋で、私は再び涙を流した。

すると、今度はさっきよりも大きくカーテンが開いた。

「咲楽ちゃん、お疲れ様。」

そう言って、泣いている私の頭を撫でてくれる大きな手。

「透析、痛いよね…僕もやった事あるからわかるよ。……我慢できて偉い。よく、頑張りました。」

奏汰くんがそう言ってくれて、私は、小さく頷いた。

それから、私は奏汰くんに慰めてもらいながら泣いた。

私の心の中の花の芽は、少しだけ成長した。
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