四季
四季2
11
教室に向かう途中で夏美が言った。
「小野翔太(おのしょうた)君って知ってる?」
「ああ、夏美と同じクラスだよな、確か」
「そうそう。でね、翔太君、マジかっこいいの!」
「はいはい、そうですか」
三年二組の近くまで来ると、その翔太が友達と歩いていた。それを見つけた夏美は足を止めてみいってしまった。
「わー、本物だー」
「いつも教室で見てるんだろ?」
「でも、かっこいいんだから仕方ないじゃん」
「確かに爽やかそうなイケメンだな」
「でしょ、でしょ! くうー! 夏美にもついに春が来た!」
「まだ決まったわけじゃないからな。って、聞いてんのかよ、夏美」
夏美はボーッと翔太の背中を見つめていた。俺は夏美の頭を軽く叩く。
「おーい、夏美さん? 授業が始まりますよ? 一時間目は体育じゃなかったのか?」
「あー! そうだった! じゃあね、大樹!」
「じゃあな」
走り出した夏美が戻ってくる。何か思い出したのか。
「大樹。しばらく厄介になります」
「えっ、どういうこと?」
「大樹の家に泊まるってこと。大樹のお父さんには許可もらったから」
「えっ! ちょっと待てよ! 俺の許可は!?」
「じゃ、またねー」
再び夏美は走り出す。そして、三年二組に入って行った。
俺はしばらく唖然とした。そんな俺に声をかけてくれたのは春だった。
「大樹、おはよう」
「春か、おはよう」
「珍しい事もあるのね」
「まあな」
「もう、授業が始まるわ。急ぎましょう」
「そうだな」
俺達は三年一組の教室に入った。そして、穏やかな一日が始まる。
※
午前中は寝てしまった。古典とか何語だよと思う。
昼食は購買で済まそうと立ち上がる。廊下を中庭を見ながら歩いていると、また見知った姿を発見した。千秋だ。一人でパンを食べている。俺はなんとなく中庭まで走った。
「よっ!」
モグモグ。
「よっ!!」
モグモグ、ゴックン。
「なんですか、急に」
「何って……。まあ、なんとなくかな」
「……」
「寂しくないか、一人」
「慣れてますから」
「そんなことには、慣れなくていいんだよ」
「……」
「ちょっと、待ってろ」
スマホを取り出し、春と夏美を呼んだ。しばらくして二人がやってくる。
「これで四人だ。寂しくはないだろ? 改めて自己紹介だ。俺は大樹」
「私は春。木村春」
「あたしは夏美。村田夏美」
「千秋は千秋。稲田千秋」
そこへ、冬真が通りかかった。今頃登校なのだろう。
「おーい。冬真ー。こっちこーい」
一瞬こちらを振り向いたものの、無視して歩き出す。仕方なく俺は冬真を引っ張ってきた。
「こいつは冬真。大地冬真。冬真、よろしくは?」
「よ、よろしく……。って、なんでオレがこんなことしてんだよ」
「冬真、こっちが春で、こっちが夏美、でこっちが千秋だ」
「ど、どーも……」
「もっと笑えよ、冬真」
俺は冬真の背中を叩く。すると、冬真は俺にひじうちを返してきた。
「ぐっ、や、やるな、お前……」
「……」
「これで五人。これなら楽しいだろ。な、千秋」
「でも、上級生に下級生。変な目で見られるかも……」
「まあ、一人よりはマシでしょ」
「まあね……。ありがと」
それから、どうでもいい話をしたりして時間は流れていった。印象に残ったのは、冬真の弁当だった。とても可愛く盛り付けられてて驚いた。春と同じかそれ以上だった。冬真も一応、女の子だしな。
今回の昼休みは、けっこう楽しかった。
※
教室に向かう途中で夏美が言った。
「小野翔太(おのしょうた)君って知ってる?」
「ああ、夏美と同じクラスだよな、確か」
「そうそう。でね、翔太君、マジかっこいいの!」
「はいはい、そうですか」
三年二組の近くまで来ると、その翔太が友達と歩いていた。それを見つけた夏美は足を止めてみいってしまった。
「わー、本物だー」
「いつも教室で見てるんだろ?」
「でも、かっこいいんだから仕方ないじゃん」
「確かに爽やかそうなイケメンだな」
「でしょ、でしょ! くうー! 夏美にもついに春が来た!」
「まだ決まったわけじゃないからな。って、聞いてんのかよ、夏美」
夏美はボーッと翔太の背中を見つめていた。俺は夏美の頭を軽く叩く。
「おーい、夏美さん? 授業が始まりますよ? 一時間目は体育じゃなかったのか?」
「あー! そうだった! じゃあね、大樹!」
「じゃあな」
走り出した夏美が戻ってくる。何か思い出したのか。
「大樹。しばらく厄介になります」
「えっ、どういうこと?」
「大樹の家に泊まるってこと。大樹のお父さんには許可もらったから」
「えっ! ちょっと待てよ! 俺の許可は!?」
「じゃ、またねー」
再び夏美は走り出す。そして、三年二組に入って行った。
俺はしばらく唖然とした。そんな俺に声をかけてくれたのは春だった。
「大樹、おはよう」
「春か、おはよう」
「珍しい事もあるのね」
「まあな」
「もう、授業が始まるわ。急ぎましょう」
「そうだな」
俺達は三年一組の教室に入った。そして、穏やかな一日が始まる。
※
午前中は寝てしまった。古典とか何語だよと思う。
昼食は購買で済まそうと立ち上がる。廊下を中庭を見ながら歩いていると、また見知った姿を発見した。千秋だ。一人でパンを食べている。俺はなんとなく中庭まで走った。
「よっ!」
モグモグ。
「よっ!!」
モグモグ、ゴックン。
「なんですか、急に」
「何って……。まあ、なんとなくかな」
「……」
「寂しくないか、一人」
「慣れてますから」
「そんなことには、慣れなくていいんだよ」
「……」
「ちょっと、待ってろ」
スマホを取り出し、春と夏美を呼んだ。しばらくして二人がやってくる。
「これで四人だ。寂しくはないだろ? 改めて自己紹介だ。俺は大樹」
「私は春。木村春」
「あたしは夏美。村田夏美」
「千秋は千秋。稲田千秋」
そこへ、冬真が通りかかった。今頃登校なのだろう。
「おーい。冬真ー。こっちこーい」
一瞬こちらを振り向いたものの、無視して歩き出す。仕方なく俺は冬真を引っ張ってきた。
「こいつは冬真。大地冬真。冬真、よろしくは?」
「よ、よろしく……。って、なんでオレがこんなことしてんだよ」
「冬真、こっちが春で、こっちが夏美、でこっちが千秋だ」
「ど、どーも……」
「もっと笑えよ、冬真」
俺は冬真の背中を叩く。すると、冬真は俺にひじうちを返してきた。
「ぐっ、や、やるな、お前……」
「……」
「これで五人。これなら楽しいだろ。な、千秋」
「でも、上級生に下級生。変な目で見られるかも……」
「まあ、一人よりはマシでしょ」
「まあね……。ありがと」
それから、どうでもいい話をしたりして時間は流れていった。印象に残ったのは、冬真の弁当だった。とても可愛く盛り付けられてて驚いた。春と同じかそれ以上だった。冬真も一応、女の子だしな。
今回の昼休みは、けっこう楽しかった。
※