四季
14


夏美 side

「良く眠ってるなー」
大樹の寝顔、バカみたい。クスクス。
「行け! 良男! 大樹にのしかかれ!」
「にゃーお?」
あたしは戸惑う良男を大樹の上に乗せた。
「うーん、なんか、重い」
クスクス。バカだな大樹は。良男が乗ってるんだよ。クスクス。
「夏美かあ?」
バチン!
おもいっきり大樹の頬を叩いた。
大樹はビックリして起きあがる。
「なんか、ほっぺが痛いんだけど」
「大樹が悪いんだからね!」
「えっ、なんの話?」
「知らなくていい! さ、学校の準備しちゃって」
ほんっとバカなんだから大樹は。


End





春 side

「おはよう。お父さん、お母さん」
私は両親の写真におはようの挨拶をする。別に死んでしまった訳ではない。寂しいから写真を飾っている。
「もうすぐ、会えるんだね」
誕生日に会えるのが楽しみでワクワクしている。こんなの久しぶり。
学校に行く準備を整える。
「それじゃ、行ってきます」
玄関のドアを開けると、日差しが眩しい。春の暖かい日、私は一歩踏み出した。


End





千秋 side

「ケホッケホッ」
「大丈夫? 千秋?」
「大丈夫、お母さん」
「学校、行ける?」
「もちろんだよ。たくさん思い出作らなきゃ」
「あんまり無理しちゃだめよ。具合が悪くなったら保健室ね。わかった?」
「はーい。じゃ、行ってきまーす」
日差しが体に響く。私は夏に不安を抱いた。


End





冬真 side

「行ってらっしゃい、冬真」
「母さん。休んでてよ。夜勤明けでしょ?」
「冬真の顔が見たくてね」
母さんは優しく笑う。冷たい心が暖まっていくのがわかる。姉さんと比べてこんな出来損ないなのに、優しくしてくれる。父さんと比べたら……。
「それじゃ、行ってきます」
玄関のドアをオレは力強く押した。


End





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