四季
15


学校。
「まだほっぺがヒリヒリするよ」
「しょーがないでしょ。大樹が悪いんだから」
「まあ、それはいいとして。なんかつけられてる気がしないか?」
小さな声で言う。
「あたしもそう思ってた」
小さな声で返す。
廊下を真っ直ぐ歩き、つきあたりを曲がる。そこで待ち伏せた。
ドスッ。
「……」
「「だれ?」」
俺と夏美は目を見合わせた。
「ワタシは傍観者。ヒューマノイドインターフェイス」
「「??」」
傍観者は一年生のリボンをつけている。おそらく、この学校の生徒なのだろう。
「名前は?」
夏美が訊く。
「傍観者に名前は――」
「な、ま、え、は?」
強気の夏美。
「えっと、月詠暦(つくよみこよみ)……です」
「暦ね。なんでつけるようなマネしてるの?」
「観察対象だから……です」
「もう一度訊くけど、なんで?」
「……」
「な、ん、で?」
「……」
夏美が問いつめるが、暦は無言をつらぬく。
「もういいだろ。悪気があったわけじゃなさそうだし」
「そうかなあー」
授業の始まりのチャイムが鳴り、俺と夏美は教室へと急ぐ。
それを見つめる暦がいた。





授業は退屈過ぎる。毎日、毎時間、地理だったらいいのに……。それはそれで、飽きてしまうか……。
窓際の席は日当たりが良くて困る。眠気が襲ってくるのである。
「ふぁーあ」
あくびをひとつした。それを古典の石山(いしやま)先生に注意される。
注意されたが、眠気が強く、ついには眠ってしまった。





地域散歩の会議がまた翔太のおかげで早く終わった。昼休みに春に家の庭の掃除を手伝って欲しいと言われたので、快く引き受けた。
今は、春の家で庭の掃除中。
「明後日、両親が帰って来るから、その前にきれいにしたくて」
「お安いごよう。といっても、二人で間に合うか?」
「なんとかなるでしょ」
「頑張ってみますか」
暗くなるまで作業をして半分ぐらいは終わった。明日にはなんとかなるか……。
「明日で地域散歩の会議、最後だな。俺は自由になれるのか?」
「まだね。体育祭もあるし」
「ふーん。そっか。まあ、楽しいからいいけどね」
帰り際にそんなことを話して、さよならをした。





夜。
家に帰ると疲れからかすぐに寝てしまった。
夏美が良男とワーワーやっているが、俺は眠ることができた。





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