四季
16


金曜日、放課後。
例の地域散歩は五月の第三週土曜日に行われる事になった。あとは地域散歩の詳細をプリントにして配布する。それで仕事はほとんど終わり。
地域散歩の会議が終わり、俺と春は近くのショッピングセンターに来ている。
「イチゴのショートケーキっと」
「あと、これね。パン! って音がなるやつ」
「ロウソクも必要?」
「いや、明日があるからいいよ」
「そっか」
一応一通りショッピングセンター内をまわった。春の数日分の食料をついでに買う事になった。
「大樹がいて助かるわー」
「そお? これぐらいならいつでも呼んで」
「ありがと」
俺は荷物を両手に春の後ろを歩く。そして、春の家に着いた。荷物を片付け、庭に出た。
「よし、じゃあ、残りの分、掃除しちゃいますか」
「でも、間に合うかな」
「間に合わせるさ」
草むしりに取りかかろうとすると、暦がやって来た。
「お前、いつの間に」
「あなたじゃ間に合わないから……手伝う……」
「そうですか。ありがとな」
「最近、知り合ったんだけど、いい子なのよー暦ちゃん」
ボッ。
暦の顔が少し赤く染まったようだった。照れているようだった。
「わかりやすいな、お前」
暦は恥ずかしいのかすぐに草むしりに取りかかった。俺達もあとに続く。
一時間ぐらいかけてようやく草むしりが終わり、庭はだいぶさまになってきた。
辺りは暗くなってきている。
「ワタシ、帰る……」
「そっか、ありがとな。助かったよ」
暦は足早にその場から立ち去った。
「これで、庭を見られても恥ずかしくないな」
「うん」
プルルルル。プルルルル。
そこに春へ電話が鳴った。春はポケットからスマホを取り出し、電話に出る。
「あ、お母さん? どうしたの? えっ! あ、そ、そうなんだ……。わかった。仕事頑張って……」
プーッ。プーッ。
暗くなっているのでわからないが、春は泣いているようだ。
「どうして私、いつもこうなるの……」
おそらく、両親は来れなくなったのだろう。
俺はそっと春の肩に手を乗せる。
「俺がいるから……。こんな俺だけど、いつでも頼ってくれていい」
「どうしてそんなに優しいの……。反則だよぉ……」
春は俺の胸を涙で濡らした。
俺は春の頭をゆっくり、何回も泣き止むまで撫でた。





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