四季
17


ある程度泣き終えて、春は少し元気になった。
「今夜は泊まってって?」
「泊まりか……。まあ、いいか」
春は目が少し赤くなっているが、笑顔をこちらに向ける。
俺は居間に通された。春はキッチンへ向かい、料理を始める。
「手伝える事、ある?」
「いいから、座ってて」
「わかった」
テーブルの上に写真が飾ってある。そこには若い男女が写っている。春の両親だろうか。そこに春が写っていないのはどこかもの寂しい。
近くの本棚にアルバムを見つけた。手に取り、開く。若い男女と春が写っていた。しかし、春の小学六年生ぐらいから写真はとぎれている。中学生以降が……ない。
「お待たせー」
春が料理を持ってやって来た。アルバムを本棚にしまい、イスに座る。
「おー、ハンバーグか」
テーブルには、ハンバーグとごはんそれにサラダが並べられた。
「さあ、食べて食べて」
「それじゃ、いただきます」
「いただきます」
ハンバーグを一口食べる。
「う、美味い! 美味いよ、春!」
「いつも通りよ。大樹は何でも美味しく食べてくれるから、嬉しい」
「何でもじゃねーよ。美味いから美味いって言ってるんだ」
「ありがと」
ごはんがすすむ。
「おかわり!」
「いいけど、サラダも食べてよー。残ってるじゃない」
「サラダは……いらない」
「そんなこと言わずに! 大きくなれないわよ!」
「もう大きいからいいんだよ」
「もう……」
俺はハンバーグとごはんをあっという間に平らげ、食事を終えた。サラダは春にあげた。春にはもう少し大きくなって欲しいからだ。決して、野菜が嫌いだからじゃないぞ……。
「食後にイチゴのショートケーキ、食べようぜ」
「はい、大樹の分」
「サンキュ。あ、そうだ、誕生日、おめでとう」
「ありがと」
早速、口に運ぶ。
「うめえ」
イチゴのショートケーキもあっという間に平らげてしまった。
そういえば、クラッカーがあったがそれは春が大事に保管することになった。
春の部屋。
春は泣き疲れたのかスヤスヤと眠っている。
日付はかわった。
俺は乱れた毛布を春にかけ直し言う。
「改めて、誕生日、おめでとう、春」
そして俺は客室に戻り、眠った。





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