四季
23


千秋 side

ゴールデンウィーク初日はあいにくの雨だった。しかし、今日は晴れて良かった。両親の思い出の場所、光山(ひかりやま)に登るのだ。山と言っても小さな山で、登るのは比較的楽だ。今の時期は緑いっぱいの景色が見所だ。
「準備できたー。千秋ー?」
「待ってー、もう少しー」
髪の毛を整える。
「千秋ー?」
「今行くー」
お父さんの車で光山に向かう。しばらく進むと緑が景色を覆った。病気がちな私だったが、緑豊かな景色に、車酔いはしなかった。
そして、光山。
「うわー、キレイ。空気も清んでるー。早速、頂上目指して、レッツゴー!」
約二十分で頂上に到着した。道中、草むらにリスみたいな動物を発見した。あまりの可愛さに写真をパシャリ。
頂上でランチ。お母さんのサンドイッチは最高! やっぱり中身はイチゴジャムだよね!
頂上で写真を撮りながら、お母さんに訊く。
「お父さんはなんてお母さんに告白したの?」
「それは……内緒」
「ええー、教えてよー」
「まあ、ストレートな言い方だったわね」
「好きです! って感じ?」
「そんなところ」
私は、写真を撮り終えた。低い山でも頂上は酸素が薄いのか、フラフラする。ついには、倒れそうになった。なんとかお父さんが支えてくれたが、今日はもう帰ることになった。
「えーもう少しー」
「だめです。また来ましょ?」
「じゃあ、秋ね。約束だよ!」
「わかった、わかったわよ。それじゃ、帰るわよ」
「はーい」
私はお父さんに支えられながら下山した。
車に乗り込んだとたん、疲れからか、後部座席に倒れ込んでしまった。そのまま、私は、眠ってしまった。
車はゆっくり発進し、家に帰っていく。


End





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