四季
36


お昼。中庭。
俺と春と夏美と冬真でお昼ご飯。千秋は誘ったが来れないみたいだ。
俺は弁当を忘れたのだが、夏美はなぜか手作り弁当を持参している。
いつ作ったのだろうか。一緒に住んでいるのに気づかなかった。
「夏美、いつ作ったの?」
「朝早くに作った。中身、見る?」
「見せて」
「ジャーン!」
夏美が弁当の蓋を開ける。
「彩り豊かだな」
「でしょ? 苦労したんだから。食べてみて」
「じゃ、お言葉に甘えて」
パクッ。
ピキーーーーン!
こ、これは、美味しく……ない。
「どう……?」
「ん……まあまあ……かな……」
「やったー! 嬉しい!」
「ポジティブだな、夏美」
「えっ! どういうこと」
「なんでもない」
気分がいいのか、春と冬真にもすすめる夏美。
「確かに……まあまあ……かな……」
春は気を遣ったようだ。
「不味い、これ」
とぅーーーーまーーーー!
少しは気を遣え!
「そ、そっか。正直に言ってくれてありがと……」
夏美は少し落ち込んだ様子。
「わ、私のも食べて」
「じゃ、オレのも、どうぞ」
夏美が春と冬真の弁当を少しいただく。
「う、美味い! なんで、なんでこんなに美味しいの!」
夏美は少し元気になったみたいだ。
俺も春と冬真の弁当を食べる。
「美味いなあ」
しみじみそう思う。
ちなみに、夏美の弁当はみんなで仲良く食べた。
食べられないわけではないんだが……なあ……。





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