四季
40


大きな丘の大きな木。
「まーたここか」
「……」
「雨宿り、俺もさせてもらうぞ?」
「……」
俺は夏美の隣にゆっくりと腰をおろした。
「いつからそんなに無口になったんだ?」
「……」
「まあいいさ。いつまでもそばに居てやるよ」
「……」
それから数時間後。雨が止んだ。しかしまだ、雲が漂っている。星はまだ、見えなかった。
数時間の間、ずっと座りっぱなしで退屈だ。
「夏美、雨、止んだぞ。そろそろ帰るか?」
「……」
「夏美? おい、夏美?」
「ぐーぐー」
「ったく、寝てんのかよ。仕方ない、夏美を背負って帰るか」
俺は夏美を背負い、歩き出す。
その道中で
「気にするなよ、夏美」
と、聞こえるか聞こえないかぐらいの音量でそう言った。
「いつもありがと、大樹……」
寝言……じゃないよな。
しかし、俺はそれを寝言ということにした。
家に帰る頃には空に星が輝いていた。
その星は夏美に新しい希望を抱かせてくれそうだった。





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