四季
47


千秋 side

七月初旬。
「ケホッケホッ」
「千秋、大丈夫?」
「大丈夫だよ、お母さん」
「念のために、熱を計りなさい」
「えー……わかったよ」
私は体温計で熱を計った。
ピッピッピッピッ。
「どれどれー、お母さんが見てあげる」
私の体温は三十九度だった。
「千秋! 熱があるじゃない! 病院に行きましょう!」
「えーやだー」
「やだじゃありません! 早く準備しなさい。お母さんは先生に休みの連絡をするから」
「わかったよ……」





病院。
「安静が必要ですねー。つまり、入院が必要ということです」
「えーやだよ、先生。学校行きたい。というか病院はやだ!」
「今は必要であって、病状がなくなったらまた家に帰れるし学校にも行ける」
「千秋、いうことを聞きなさい」
「えー」
「とりあえず、一週間、様子をみましょう」
「……」
早速病室に案内された。ここは前まで使っていた個室。
「また戻って来ちゃった……」
ベッドはふかふかで寝心地はいい。でも、家のベッドの方が安心できる。
窓辺から見える景色は緑が少なく退屈だ。景色を眺めていると客がやって来た。
「また戻って来たのかよ。仕方ねーな。またトランプの相手でもしてやるよ」
高橋蒼太(たかはしそうた)だ。私と同じ病弱で長期入院をしている。
「してやるよじゃなくて、して下さいでしょ?」
「いーじゃん、同い年なんだから」
「……」
「なあ、ババ抜きにする? 七並べにする?」
「仕方ないなあー。一回だけだよ?」
蒼太はいつも私の回りに寄ってくる。しつこいほどに。でも、憎めない。憎めないほどの笑顔が蒼太にはあるから。
結局、一回だけと言ったトランプを何回もやってしまった。だって、それぐらいしかやることがないから。熱があるけどなかなか自由がきく体なのだ。
晩ご飯の病院食を食べ、薬を飲み、その日はぐっすりと眠った。


End





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