四季
家に帰ると親父が待っていた。
「大樹、お帰り。食事作っといたから」
新聞を見ながらそういう親父は、意外と料理が上手い。身の回りもきっちりするタイプで、掃除もけっこう好きらしい。
「あ、ありがと」
俺は料理を電子レンジで温めてから席に座る。
「いただきます」
手を合わせる。農家のみなさんそして親父に感謝する。
美味い!
親父また腕をあげたなとそう思う。
美味い料理を食べれるのもこんな生活ができるのも親父のおかげ。本当に感謝している。
食事が終わり、食器を洗い、片付ける。そして、俺は自分の部屋に行く。
「ふぅー。疲れた」
ベッドに倒れこむ。
「そういや、夏美はあの木のところにいるのだろうか。今日は疲れていけない。また今度にしよう」
俺は深い眠りについた。
※
夏美 side
「今日も星がきれいだなー。落ち着くー」
あたしはなにも考えず空を見上げる。その時間がとても落ち着く。本当は、大樹のそばがもっと落ち着く。家にはもう帰りたくない。唯一のあたしの居場所はあたし自身で出てきた。家計が苦しいのにあたしまで面倒を見てくれるおばさんに迷惑だから。でも、自分じゃ何もできないって気づいた。自分の非力さを嘆くしかなかった。
「はーあ。どうしてこうなんだろ、あたし」
急に大樹を欲した。でもここには大樹がいない。あたしは、大樹の家に行ってみることにした。
深夜、大樹の家の前で力尽きて眠った。
End
※
Past of 夏美
「お父さん! お母さん! 死んじゃやだよ! ねぇ、ねぇってば!」
「夏美ちゃん。お父さんとお母さんはもういないの。お空の星になったの。いい? わかるわね?」
おばさんはあたしをせいする。
「やだ! やだよ! そんなのやだ!」
「いい? 夏美ちゃん。これからはおばさんがお世話してあげるから……ね?」
「でも……でも……」
「もう泣かない! 夏美ちゃんは強い子なんだから」
「……」
「さあ、行きましょう」
おばさんの家にはすでに姉妹が二人いた。そこにあたしが入ることになる。家計は圧迫される。
「お前のせいで家族旅行がなくなった! どうしてくれるんだよ!」
「そーだそーだ、お姉ちゃんの言う通りだ!」
「ご、ごめんなさい……」
「どうしてくれるって訊いてんだよ!」
そこへおばさんがやってくる。
「やめなさい、二人とも。もう少ししたら家族旅行に連れてってあげるから」
「ちぇっ」
「ごめんなさい……」
あたしはただ謝るしかなかった。今の身分ではこれしかなかった。
中学を卒業したらひとりだちする予定だった。しかし、中学の学校の先生に推されて高校に入学することができた。高校の学費が無償化されて良かったと思う。成績が良かったので地元ではそこそこの県立の進学校に入学できた。でも、バイトは禁止されていた。生活費は相変わらずおばさんの負担になっている。だからあたしは退学処分を望んだ。勉強もしないバイトもしない、そんなあたしに声をかけてくれたのは大樹だった。
「何かあったら、何でも言えよ? 俺達、もう友達なんだから」
その優しい言葉に涙が出そうになった。
その後は、学校に行ったり行かなかったりでボチボチやっている。
End
※