それもまた一つの選択
「うわあ、小さい」
病室に戻ってからしばらくするとトキさんと高橋さんがやって来た。
なんでも完璧なトキさんが初めて戸惑いを見せた気がする。
「若いお父さんとお母さんだな〜」
椅子に腰掛けてこちらを見てそう呟いた高橋さんはなんだか嬉しそうにしている。
「藤野が戸惑うの見てると楽しい」
やっぱりそこ?
「当たり前だよ、緊張するよ」
恐る恐る抱っこして、トキさんが赤ちゃんの手を軽く握りしめた。
優しい眼差しで微笑むトキさん。
…私、それを見ただけで倒れそうになるくらい、幸せだ。
この人の…こういう仕草が大好きで。
大好き過ぎて。
時々胸が苦しくなる。
高橋さんがいなければ。
抱きついてキスをしたに違いない。
「早く家に連れて帰りたい…」
トキさんの高い、小さな声が私に届く。
私の視線に気がついたのか、トキさんはこちらに視線を落とすと
「勿論、遥も、だよ」
ちょ…トキさん!
その微笑、私…。
倒れる〜!
「ゴホン」
少し離れた椅子から咳払いが聞こえる。
「よーちゃん」
高橋さんがニヤリと笑った。
「照れ過ぎ」
もー!
高橋さん!
「藤野も幸せだよな、こんなに愛されてるんだ。
大切にしろよー」
トキさんは高橋さんを見て吹き出すと
「何を今更。俺はこの二人を一生守るよ」
私を見て、目で合図をしてくれた。
-大丈夫-
私は頷くとトキさんはあの優しい笑みを浮かべてまた再び赤ちゃんを見つめた。
「ところでさ、名前は決めたの?」
高橋さんに言われて俄かに動揺する。
「決めてるよ」
俯いて動揺している私の側で平然と言うのはトキさん。
「お腹の中の子が男の子だとわかってすぐに決めてたんだ」
そっと私に耳打ちをする。
「良いよね?」
そりゃ、問題ない。
私は頷く。
「こうへい」
トキさんが言った瞬間、高橋さんが固まった。
「はい?」
「こうへい。漢字は違うけど」
「なぜそんな名前を?」
「お前のように、人を思いやる気持ちを常に持っていて欲しいんだ。
お前はその名の通り、公平無私。
そんな風に育って欲しいから。
だからお前の名前を貰った」
そう、私達は高橋さんに何度も救われた。
自分の息子も沢山の人を助けて欲しい。
ただ、全く同じ漢字は気が引けたので。
幸せになって欲しい。
その願いを込めて。
この赤ちゃんは「幸平」なの。
「うわあ、責任重大だな」
そんな風に言う高橋さん。
少しだけ目には光るものがあった。
病室に戻ってからしばらくするとトキさんと高橋さんがやって来た。
なんでも完璧なトキさんが初めて戸惑いを見せた気がする。
「若いお父さんとお母さんだな〜」
椅子に腰掛けてこちらを見てそう呟いた高橋さんはなんだか嬉しそうにしている。
「藤野が戸惑うの見てると楽しい」
やっぱりそこ?
「当たり前だよ、緊張するよ」
恐る恐る抱っこして、トキさんが赤ちゃんの手を軽く握りしめた。
優しい眼差しで微笑むトキさん。
…私、それを見ただけで倒れそうになるくらい、幸せだ。
この人の…こういう仕草が大好きで。
大好き過ぎて。
時々胸が苦しくなる。
高橋さんがいなければ。
抱きついてキスをしたに違いない。
「早く家に連れて帰りたい…」
トキさんの高い、小さな声が私に届く。
私の視線に気がついたのか、トキさんはこちらに視線を落とすと
「勿論、遥も、だよ」
ちょ…トキさん!
その微笑、私…。
倒れる〜!
「ゴホン」
少し離れた椅子から咳払いが聞こえる。
「よーちゃん」
高橋さんがニヤリと笑った。
「照れ過ぎ」
もー!
高橋さん!
「藤野も幸せだよな、こんなに愛されてるんだ。
大切にしろよー」
トキさんは高橋さんを見て吹き出すと
「何を今更。俺はこの二人を一生守るよ」
私を見て、目で合図をしてくれた。
-大丈夫-
私は頷くとトキさんはあの優しい笑みを浮かべてまた再び赤ちゃんを見つめた。
「ところでさ、名前は決めたの?」
高橋さんに言われて俄かに動揺する。
「決めてるよ」
俯いて動揺している私の側で平然と言うのはトキさん。
「お腹の中の子が男の子だとわかってすぐに決めてたんだ」
そっと私に耳打ちをする。
「良いよね?」
そりゃ、問題ない。
私は頷く。
「こうへい」
トキさんが言った瞬間、高橋さんが固まった。
「はい?」
「こうへい。漢字は違うけど」
「なぜそんな名前を?」
「お前のように、人を思いやる気持ちを常に持っていて欲しいんだ。
お前はその名の通り、公平無私。
そんな風に育って欲しいから。
だからお前の名前を貰った」
そう、私達は高橋さんに何度も救われた。
自分の息子も沢山の人を助けて欲しい。
ただ、全く同じ漢字は気が引けたので。
幸せになって欲しい。
その願いを込めて。
この赤ちゃんは「幸平」なの。
「うわあ、責任重大だな」
そんな風に言う高橋さん。
少しだけ目には光るものがあった。