それもまた一つの選択
それからは。

図書室で毎日待ち合わせ…みたいな感じで会い、駅まで歩く日々が続いた。

トキさんは今、3年生で大学受験するとの事。

色々としたいことがあるので入れる大学を受けるって言ってた。

そのしたい事を聞いたけど今は秘密って言われた。

トキさんって何したいんだろう。



GW合間の平日。

私は初めてトキさんのお友達に会った。

名前をいきなり聞かれたので

「今井遥です」

…そういえば。
私はトキさんの名前を知っているけれど。
トキさんには私の名前を言っていなかったことにその時、気が付いた。

高橋さんはトキさんと違って見た目からして陽気な人だった。

「ヨウ…って男の子みたいな名前だね」

なんて言うから

「両親は男の子が良かったみたいですけど…残念ながら」

男の兄弟がいれば…私の環境はもっと違ったんだろう。

「で、よーちゃん」

高橋さんは親しみを込めてそう呼んでくれた。

「藤野ってよーちゃんの彼氏?」

え…!?

顔が一瞬で赤くなるのがわかる。

「え~…え~…」

高橋さん、急すぎて私の心臓壊れそう!!

「いやあ、てっきり毎日帰ってるから付き合っているのかと」

高橋さんはトキさんを見つめながらニヤニヤしていた。
トキさんは目を半開きにして高橋さんを睨んでいる。

「え~…」

付き合うとか…いやいや、私が勝手にトキさんを想っているだけで。
トキさんはきっと暇つぶしに私のお相手をしてくれているんだと思う。

「藤野はきっとよーちゃんの事、好きだよ」

高橋さん、私の心臓を止める気なんだと思う。
でも、トキさんは?

「ええっ!?トキさん、本当ですか?」

トキさん、眉間にしわが寄っている…。
でも言わないと…私の想い、伝わらないよね!!

「私、図書室で寝ていたトキさんを初めて見た時、ずっとこの人の隣で座っていたいなあって思ったんです」

緊張で目が潤む。

「本を何冊も積んで。
その横で机に伏して寝ているトキさんが…幸せそうで」

トキさんと高橋さんが目を丸くしてお互いの顔を見合わせていた。

やがて高橋さんが破顔し、

「二人とも、お互い気になるんだろ?付き合えよ!」

私とトキさんの肩をがっしりと掴んでワハハ!!と大笑い。

トキさんの顔を見ると…少しだけ顔が赤くなっているのを見て、私は尚更恥ずかしくなった。



高校に入学して1か月。

生まれて初めての彼氏が出来た瞬間だった。
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