それもまた一つの選択
「バイク、調子はどうですか?」

昼休み。

高橋と遥と3人で食堂で昼ご飯を食べていると高橋の隣にそっと座った1年生。

「ありがとう、良い感じ」

その1年にそう告げると嬉しそうに笑った。
人懐っこい顔の彼の名前は柏原 拓海。

同じ高校だが、遥と同じ1年。
しかもクラス、遥と同じだったと聞いてびっくりした。

拓海君は普段は校舎の屋上でのんびり昼寝をしたりしているのだが、最近寒くなってきたので時々顔を合わせると一緒に食事を取るようになった。

俺のバイク、彼のお父さんが経営しているバイク屋さんで買った。
中々良い感じで気に入っている。
いつか、遥を後ろに乗せたいけれど、それこそ遥のお父さんに襲撃されそうなので行動に移していない。

「レースはどうなの?」

彼はバイクのレースに出ている。

「まあまあ、悪くはないです」

多分、高校を卒業するころには世界の舞台へ行きそうだ、という事を彼のお父さんから聞いている。
周りにいる生徒はそんなこと全然知らないだろうけれど、凄い人がここにいるんだぞーって言いたいくらい。

「それより藤野さん、大学国立じゃないんですね」

俺は頷く。
来週、公募制推薦でこの高校の母体でもある桜ヶ丘大学を受ける。

「高校のすぐ隣の敷地だしねー」

食堂も何か所もあり、大学の食堂をこの付属高校の生徒が使っていたりもする。
行き来自由だし。
…遥の卒業までを少しでも近くで見届けたい。

それと。

「俺、本気で頑張らないと受からない」

高橋が行ける大学はここしかないらしい。
内部進学でも基本はクラスで5位以内じゃないと合格は難しいと言われている。
が、高橋はクラスでは15番くらい。
ずっと勉強頑張ってきたが正直難しい。
後は運任せ。
その高橋に俺がそれに合わせた感じ。
…って俺が落ちたらシャレにならないけれど。

「頑張ってください、高橋さんも藤野さんも」

拓海君、その笑顔、天使みたい。

「頑張る―!!」

高橋はガッツポーズを作って見せたが、内心は死にそうなくらいプレッシャーを受けていた、というのは随分後から聞いた。
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