それもまた一つの選択
「なーんだ、そんな事で悩んでいるんですか」

年が明け、あと1か月ほどで卒業、という頃。
遥が風邪で休み、高橋も風邪で休み、一人食堂でのんびりと昼飯を食べていたら拓海君もやって来た。
遥の事を相談するとそんな返事。

「クラスでは適当には話してますよ…ただ、親友はいなさそうだけど」

親友はいない、か。

「僕、卒業まで今井さんを見守りますよ」

なんて拓海君が真顔で言うもんだから思わず吹き出す。

「拓海君だって忙しいし、もしこの先、彼女出来たらそれどころじゃないよ」

拓海君は首を横に振った。

「彼女出来たら疎遠になるのは本当に友達なんでしょうか。
…今井さんは現に藤野さんの彼女だし。
ても、それで藤野さんと高橋さんが仲悪くなったりはしてないじゃないですか。
もし、僕と今井さんの仲を疑うような彼女なら」

拓海君は箸を止めて目を鋭くさせた。

「そんな彼女はいりません。
きっと、僕の本来の活動も、理解してもらえないから」

…やっぱり君は。
凄いなあって思ってしまう。
そういう環境で育ったのもあるかもしれないけれど。

普通、高校生なら友達も大事だけど彼女がいたら彼女優先になると思うのに。
しっかり、自分を持っている。

もし、自分に子供が出来たら、君と同じ事をさせたいってこの時、思ったんだ。
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