それもまた一つの選択
頭がぼんやりする。

私がトキさんの奥さんになる…?

校門を出て、ふと立ち止まる。
桜の花びらがひらひらと舞い上がるのを見て、そういえば出会ったあの日にいきなりプラネタリウムに行った事を思い出す。

あの時もこんな感じで桜の花が舞っていた。
もう1年、経っちゃったのよね。

それより、トキさんの奥さんになれたらどんなに幸せだろう。

ご飯も美味しく作ってくれるし…あれ。
それはちょっと違うけど。
そこは私がするけれど…きっと。
あ、でも不安だから料理学校、今から行こうかしら。

そんな事より、今、凄く寂しい。
隣にトキさんがいないという事に。

高校に入学してからこの1年、ずっとトキさんが隣にいてくれた。
それが当たり前だったのに。
当たり前じゃなくなった、今。

「トキさん、会いたいなあ…」

そういえばこの2週間くらい会っていない。
トキさんも入学準備とか仕事とか忙しいみたいで。

「トキさん、会いたいな!!」

「はい?」

前から声が聞こえた。

…トキさん。
どうしてそこにいるの?
私を見て少しだけ微笑む。

制服じゃないトキさんがここにいるの、何だか違和感を感じる。

「どうしてここに?」

「ひょっとしたら遥が帰る時間かなって思って」

品の良いジャケットを羽織ったトキさんは、急に大人っぽくなった気がした。

「トキさん、大学は?」

「さっき、終わったところ」

そう言うとトキさんは手を差し出した。
久々にトキさんの手を握る。

ドキドキして止まらない。

「良かった、もう帰っていたらどうしようかと思った」

トキさん。
そんな微笑み方、反則です。
私、倒れちゃいそう。
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