それもまた一つの選択
「それでも、実際は難しい事が多いよね」

トキさんの大きなため息。

「…遥が高校卒業するころにいっその事、駆け落ちしようか?」

私の思考回路が停止した。
目を丸くしたまま、立ち止まってしまった。
鞄、落としそう。

「ププッ」

トキさんは私の額を人差し指で突いた。

「刺激が強すぎたか」

え…。

「冗談?」

上目づかいで聞いてみる。

「…遥が望むなら」

トキさんは私の手を強く握りしめて歩き始めた。

私が…望むなら…?

「トキさんはどう思っているの?」

夕日に照らされたトキさんの顔を見つめる。
思わずキスをしたくなるくらい、綺麗だった。

「俺は遥を手に入れるよ。
それがどれだけ難しい事でも、絶対にやり遂げる。
だって…」

夕焼けに染まる空を見つめてトキさんは呟く。

「遥は俺と一緒で夜空の星が好きだから。
いつか、絶対に本当の夜空を一緒に見るんだ。
誰にも邪魔させない。
俺はね、いつか遥のご両親にも認めてもらう。
その為に最大限の努力をするよ」

もう一度、思考回路停止。

「遥、だから何があっても逃げるな。
辛くなったらいつでも言え、俺に」

この言葉が後々重い意味を持つとは。
この時の私は何も思っていなかった。
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