それもまた一つの選択
もう一度、大きく深呼吸をした。

「では今井社長は娘さんの将来をどうお考えですか?」

社長、目を大きく見開いた。

「高校を卒業したら進学させるおつもりですか?それとも花嫁修業?」

遥の考えでは進学はほぼない。

「妻は見合いで結婚させようとしているね」

「そうでしょうね。
遥と話していても全く将来の話が出てこない。
何をしたいのか、全然」

俺は敢えて遥とそこの話は深くしていない。
遥の家は最初から高校を卒業したら今井を継げる人と結婚させる考えだったのだと思う。
何度か機会があると遥に俺のところに来いっていう事を言ったけど。
果たしてどこまで本気で受け止めているのか。

「今井社長はどうですか?奥様の話ではなく、今井社長はどうお考えてすか?」

俺はそこが聞きたい。
それによって、この後の回答を俺は変えないといけないから。
今井社長は腕組みをしてしばらく考えていたが。

「遥の好きなようにして欲しい。
今井の家なんて、別に気を使う必要もない。
いつかは後継者問題なんて事も起こるんだ。
今井の名前なんて消えてもいい。
ただどこかで社名等で残ってくれたら、それでいいと思う」

それを聞いて安心した。

「では、私に遥さんをください。高校卒業したらすぐに」

しばらく、遥のお父さんとにらみ合いになった。
このままじゃ先に進めないので口を開く。

「本当は今すぐにでも欲しい、遥が。俺のそばにいて欲しい。
時々、潰されそうになるプレッシャーを和らげてくれるのは遥なんです。
ただ、一緒にいてくれるだけで、それだけで俺は全ての事をやり遂げられそうなんです。
でも、ここだけは筋を通したいのです。
これからも門限を破る事はないです、きっと…余程の事がない限り」

遥のお父さんはヤレヤレ、といった様子でこちらを見ると

「俺は良いよ。
都貴君は遥の事を任せられる相手だと思うし、まだ学生だが社会的地位も確立しているから問題ない」

へえ、遥のお父さんはOKなんだ。

「またその件に関しては時が来ればきちんと御挨拶に上がります」

「ああ、待ってる。
会社の件も、待ってる。
今すぐじゃなくてもいい。
遥が高校を卒業するタイミングでもいい、本気で考えてくれ。
システムの件は本気でお願いしたい」

「かしこまりました。
システムの件は私がきちんと管理いたします。
また追ってご連絡差し上げます」

今井社長は大きく頷いて俺に握手を求めた。
俺もそれに応える。

システムに関する交渉は成立した。
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