それもまた一つの選択
それから。
その子と駅まで帰るのが日課になった。
電車は真逆に乗るから改札を入ったところまで。
大好きな夜空の話。
大好きな本の話。
最近見つけたお洒落なカフェの話。
これっていう意味もない話ばかり。
それでも、その時間が俺にとって癒しだった。
…ただ、興奮するとうるさいのが気に入らないけれど。
頭、ガンガンするんだよなあ。
「藤野」
5月、GW合間の学校は本当にだるい。
休んでも良かったかもしれないが、家は…俺にとって地獄だから。
階段を下りていたら後ろから呼び止められる。
振り返った先にいたのは同じクラスの高橋。
「お前さあ、最近一緒にいる女の子、彼女?」
「図書室女子の事?」
「図書室女子?何それ?」
高橋は笑う。
「…彼女ではない」
「ふーん」
「高橋、楽しそうだな」
ニヤニヤしてるのがムカつく。
「名前は?」
「は?」
「彼女の名前」
「彼女じゃない」
「で、名前」
……。
「知らん」
俺はそう言って階段を駆け下りる。
「知らない?」
高橋、なぜ俺を追いかける?
「藤野がさあ、女子に興味持つなんて、絶対にないだろ?」
…聞き捨てならん。
立ち止まって振り返る。
高橋も止まった。
「藤野、いつもさあ。
一人で本読んだり、何やら考えたり。
俺には時々話してくれるけれど、それでもお前は常に一人だし」
だって、一人が良いから。
「そんなお前が女の子と毎日帰ってるのを見たらさあ。
やたらと興味がわいてきたの。
で、彼女の名前は?」
「本当に知らん」
高橋は頭を左右に振ってヤレヤレ、という表情を浮かべた。
その子と駅まで帰るのが日課になった。
電車は真逆に乗るから改札を入ったところまで。
大好きな夜空の話。
大好きな本の話。
最近見つけたお洒落なカフェの話。
これっていう意味もない話ばかり。
それでも、その時間が俺にとって癒しだった。
…ただ、興奮するとうるさいのが気に入らないけれど。
頭、ガンガンするんだよなあ。
「藤野」
5月、GW合間の学校は本当にだるい。
休んでも良かったかもしれないが、家は…俺にとって地獄だから。
階段を下りていたら後ろから呼び止められる。
振り返った先にいたのは同じクラスの高橋。
「お前さあ、最近一緒にいる女の子、彼女?」
「図書室女子の事?」
「図書室女子?何それ?」
高橋は笑う。
「…彼女ではない」
「ふーん」
「高橋、楽しそうだな」
ニヤニヤしてるのがムカつく。
「名前は?」
「は?」
「彼女の名前」
「彼女じゃない」
「で、名前」
……。
「知らん」
俺はそう言って階段を駆け下りる。
「知らない?」
高橋、なぜ俺を追いかける?
「藤野がさあ、女子に興味持つなんて、絶対にないだろ?」
…聞き捨てならん。
立ち止まって振り返る。
高橋も止まった。
「藤野、いつもさあ。
一人で本読んだり、何やら考えたり。
俺には時々話してくれるけれど、それでもお前は常に一人だし」
だって、一人が良いから。
「そんなお前が女の子と毎日帰ってるのを見たらさあ。
やたらと興味がわいてきたの。
で、彼女の名前は?」
「本当に知らん」
高橋は頭を左右に振ってヤレヤレ、という表情を浮かべた。