それもまた一つの選択
シャワーを浴びてからベッドに寝かせるとさっきよりは落ち着いた様子になった。

でも、明らかにいつもと違う。
緊張感が伝わってくる。

「もう大丈夫だよ」

遥の美しい長い髪の毛を何度か撫でる。
その度にその目は悲しそうな色を帯びる。

「トキさん、家に帰りたくない」

俺はゆっくりと頷く。
もう、帰さないと思っている。

「遥がここにいたいならそれで良いよ」

額に軽くキスをすると遥の力が少しずつ抜けていく。
ようやく、安心したみたいだ。

「でもね。
それをする為には遥にも覚悟をしてもらわないといけない」

遥の左手と自分の右手をからめる。
しっかりと握って、俺は遥を見つめた。

「本当に俺と結婚する気、ある?」

遥は頷く。
…まだその意味をわかってないな。
更に遥を追い詰める。

「今すぐ、高校を辞める勇気、ある?」

「えっ?」

「…だから」

遥の体に自分の体を密着させる。

「俺は今後避妊しない。
…どういう意味か、わかる?」

遥の顔が一瞬、引きつった。
あんな事があった直後にこんな事を言うのは気が引ける。
けれど。
向こうがその気なら、こちらが先に手を打つ。

「…うん」

遥は俺の背中に腕を回して体を持ち上げるとそっと唇にキスをしてきた。

もう、引き返せないよ。
俺達。
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