それもまた一つの選択
遥のお父さんは深いため息をついた。
「あそこの息子…評判良くない事は聞いている」
今更そんな事を言う?
俺は手を握り締めた。
「妻と共謀してこんな事をしていたのか」
犯罪だよ、犯罪。
「遥が上手く蹴り上げてくれたから逃げる事が出来ましたけどね」
俺を蹴り上げた経験が活きたってわけ。
もし、それが本当に最後まで…と考えたら。
多分、俺はソイツを仕留めに行くだろう。
自分の全てを捨ててでも。
「だから遥の着ていたワンピースは破りました。
申し訳ございません」
座っている場所を少し後ろにずらして俺は深々と頭を下げて土下座をする。
「…城田からある程度は聞いた」
そうだろうとは思っていた。
俺はそのまま頭を下げ続け
「多分、遥は高校を卒業できないと思います。
2か月後くらいには妊娠が判明するかもしれません」
自分の呼吸が荒くなるのがわかる。
声も震えそうになる。
きっと、殴られる。
「本来ならきちんと順序を弁えて、筋を通したかったのですが。
もうこうなると、無理です。
俺の…感情のコントロールが効かない。
かといって話し合いをしたところで絶対に前には進めない。
きっと今井社長の顔に泥を塗る事になると思います」
「…頭を上げなさい」
そう言われて上げると。
…笑ってる。
何で?
「まだまだ子供だな」
と笑われた。
「一回や二回で子供が出来るとは限らないけど…。
あ、これから夏休みか。
毎日、遥は都貴君の家に行くんだろうな」
そう言われると何も回答できなくなる。
そんな風に言われたら恥ずかしくて仕方ない。
もう、バレバレだもんな。
遥のお父さんは苦笑いしながら口を開いた。
「本当に遥も都貴君も子供だ。
だが…ずっと子供のように純粋なままでいて欲しいと思う事がある。
駆け引きばかりの世界じゃ、人間が腐ってしまうからね」
それは…俺達を許す、という事なんだろうか。
「都貴君がずっと我慢していたことは知っている。
妻が遥の監視に付けていた者から話を聞いているし。
常に報告が入るのは『健全なお付き合いをされています』って。
まあ、都貴君の家の中までは入れないから本当に健全だったかどうかといえば疑問だが」
その通りです。
俺が一人暮らししてしばらくしてから全く健全ではありませんし。
そんな事、口が裂けても言えない。
「外でその辺のカップルみたいに公衆の面前でベタベタしなかった事は褒めるよ」
いや、何度か抱き合ったけど。
目をつぶってくれていたに違いない、遥を監視していた人は。
遥のお父さんは大きくため息をついて
「もし、遥が妊娠したら。
すぐに二人で俺のところに来い。
但し、家じゃなくて会社に。
妻はまだこれに懲りずに遥に見合いをさせるつもりだ。
…家という建前にこだわりすぎて遥の心を全く見ていない」
「どうしてお見合いを止めないのですか?」
ずっと思い続けていた疑問をぶつけると遥のお父さんはフッと笑って
「それがアイツの…プライドだからだ。
それだけ今井という家を守ろうとしているから。
その部分は否定したくない」
そんな事を言われたら、俺はどうしたらいい?
「俺が養子に入れば済む話ですか?」
「それは本心じゃないだろ?」
あっさりと返されてしまった。
うん、いくら実の父親が嫌だとはいえ、養子は嫌だ。
「はい、今井の監視下に置かれそうで嫌です」
「正直に答えるなあ、君は。
そういう所が俺、気に入っているんだけどね。
まあ、俺も色々と考えている事がある。
遥が妊娠する可能性が極めて高い、という事だけでも今日聞けて良かった。
早かれ遅かれ、君と遥はそうなるんだから」
殴られると思ったのにな。
肩すかしを食らった気分だが。
ここで一つ、借りを作るという事は将来的に俺自身が人質になったようなものだ、今井という家に。
「あそこの息子…評判良くない事は聞いている」
今更そんな事を言う?
俺は手を握り締めた。
「妻と共謀してこんな事をしていたのか」
犯罪だよ、犯罪。
「遥が上手く蹴り上げてくれたから逃げる事が出来ましたけどね」
俺を蹴り上げた経験が活きたってわけ。
もし、それが本当に最後まで…と考えたら。
多分、俺はソイツを仕留めに行くだろう。
自分の全てを捨ててでも。
「だから遥の着ていたワンピースは破りました。
申し訳ございません」
座っている場所を少し後ろにずらして俺は深々と頭を下げて土下座をする。
「…城田からある程度は聞いた」
そうだろうとは思っていた。
俺はそのまま頭を下げ続け
「多分、遥は高校を卒業できないと思います。
2か月後くらいには妊娠が判明するかもしれません」
自分の呼吸が荒くなるのがわかる。
声も震えそうになる。
きっと、殴られる。
「本来ならきちんと順序を弁えて、筋を通したかったのですが。
もうこうなると、無理です。
俺の…感情のコントロールが効かない。
かといって話し合いをしたところで絶対に前には進めない。
きっと今井社長の顔に泥を塗る事になると思います」
「…頭を上げなさい」
そう言われて上げると。
…笑ってる。
何で?
「まだまだ子供だな」
と笑われた。
「一回や二回で子供が出来るとは限らないけど…。
あ、これから夏休みか。
毎日、遥は都貴君の家に行くんだろうな」
そう言われると何も回答できなくなる。
そんな風に言われたら恥ずかしくて仕方ない。
もう、バレバレだもんな。
遥のお父さんは苦笑いしながら口を開いた。
「本当に遥も都貴君も子供だ。
だが…ずっと子供のように純粋なままでいて欲しいと思う事がある。
駆け引きばかりの世界じゃ、人間が腐ってしまうからね」
それは…俺達を許す、という事なんだろうか。
「都貴君がずっと我慢していたことは知っている。
妻が遥の監視に付けていた者から話を聞いているし。
常に報告が入るのは『健全なお付き合いをされています』って。
まあ、都貴君の家の中までは入れないから本当に健全だったかどうかといえば疑問だが」
その通りです。
俺が一人暮らししてしばらくしてから全く健全ではありませんし。
そんな事、口が裂けても言えない。
「外でその辺のカップルみたいに公衆の面前でベタベタしなかった事は褒めるよ」
いや、何度か抱き合ったけど。
目をつぶってくれていたに違いない、遥を監視していた人は。
遥のお父さんは大きくため息をついて
「もし、遥が妊娠したら。
すぐに二人で俺のところに来い。
但し、家じゃなくて会社に。
妻はまだこれに懲りずに遥に見合いをさせるつもりだ。
…家という建前にこだわりすぎて遥の心を全く見ていない」
「どうしてお見合いを止めないのですか?」
ずっと思い続けていた疑問をぶつけると遥のお父さんはフッと笑って
「それがアイツの…プライドだからだ。
それだけ今井という家を守ろうとしているから。
その部分は否定したくない」
そんな事を言われたら、俺はどうしたらいい?
「俺が養子に入れば済む話ですか?」
「それは本心じゃないだろ?」
あっさりと返されてしまった。
うん、いくら実の父親が嫌だとはいえ、養子は嫌だ。
「はい、今井の監視下に置かれそうで嫌です」
「正直に答えるなあ、君は。
そういう所が俺、気に入っているんだけどね。
まあ、俺も色々と考えている事がある。
遥が妊娠する可能性が極めて高い、という事だけでも今日聞けて良かった。
早かれ遅かれ、君と遥はそうなるんだから」
殴られると思ったのにな。
肩すかしを食らった気分だが。
ここで一つ、借りを作るという事は将来的に俺自身が人質になったようなものだ、今井という家に。