それもまた一つの選択
ふわふわと空中に浮いている、という表現が正しいのかも。
ハンモックのような網の上に私とトキさんは落ちた。
体に全くの衝撃もなく。
ユラユラと…。
そして目の前には夜空が…。
星はまだ、それほど輝いていなかった。
「あ…」
お父様が柵越しに下を覗き込み、私達を見つめる。
柵に掛けた握り締められた手の親指が上を向いている。
「遥、都貴君と楽しんでおいで」
そう、お父様の口が動いた。
その後ろでお母様の号泣する声が聞こえると少し胸が痛んだ。
きっと、泣き崩れているんだろう。
お父様は微笑むとクルッと後ろを向いてお母様の元へ行った。
「あー、良かった!!」
屋上より一つ下の階の部屋に私とトキさんはその網ごと入れられた。
そこにいたのは高橋さんやらその他、トキさんのお友達と思われる方とか…。
何だかいっぱいいる。
というか、ここの部屋、普通の会社なんだけど。
「土建屋、ありがとう!」
トキさんが頭を下げたのは人懐っこい笑顔を浮かべる男性。
「いやいや、俺の開発した落下防止ハンモックがお役に立てて良かった!!
な、父さん、見ただろ!!俺の開発したハンモック!!」
「あのなあ、本来はこういう事に使ったらダメだろ!!」
土建屋と呼ばれた人の父親らしき人が思いっきり彼の頭に拳骨をお見舞いした。
「…大学の友達で木野建設という会社の息子。
このビルも木野建設さんの持ち物で今日、貸してくださったんだ」
トキさん、怖い。
全てを計算尽くしていて、自分の人脈をフルに使っている。
果たして今回の使い方が正しいのかどうかわからないけれど。
「本当にありがとうございました」
トキさんがそのお父さんに頭を下げると
「もう二度と、こんな手を使っちゃ、ダメだぞ?
腹が立つのもわかるけどね。
…今井商事の娘さんも大丈夫?お腹に赤ちゃん、いるんでしょ?」
そのお父さんとお父様の感じがダブって涙腺が緩む。
「ほら!!藤野!!
よーちゃんが怖がって泣き出したじゃないか!!
お前のゲーム脳が生み出したストーリー…今回の騒動は本当にシャレになってないよ」
高橋が肘鉄を食らわせてきた。
「遥、ごめん」
トキさんは土下座までして謝る。
私は首を横に振ると
「違うの、そうじゃなくて」
私はここの社員さんから差し出されたタオルで涙を抑えると
「生まれて初めて、お父様の愛情を感じたの」
こんな茶番劇にお父様はわざわざ付き合ってくれて。
微笑んでくれていた。
「まあ、ウチと今井商事さんを比べるなんていうのは間違っているとは思うけどね。
お父さん、本当に大変だと思うよ。
会社が大きければ大きいほど、そこに働く人の生活も背負うわけだからね。
家族は後回しになっちゃったんだろうね。
それはよくわかるよ。
それこそ家の事はお母さんに全て任せた結果…。
こういう事になったんだね。
本当はそれなりの家柄の人を、って思ったのかもしれないけれど。
それ以上に藤野君の才能が凄かったからお父さんも諦めたのかもしれないし、彼なら自分の娘を幸せに出来ると思ったからこういう事に付き合ったのかもね」
土建屋さんのお父さんは更にこう言った。
「ウチの息子も藤野君の3分の1でいいから才能があればなあ…。
俺の会社、もっと安泰なのにさ~」
社員の皆さんが大爆笑していた。
「お…おい!!自分の息子に面と向かって言うか!!
藤野は特殊なんだよ!!」
「いやいや、普通の大学生」
トキさんの言葉に土建屋さんは目を見開いて
「お前のどこが普通の大学生だー!!」
ますます笑いが起こった。
ハンモックのような網の上に私とトキさんは落ちた。
体に全くの衝撃もなく。
ユラユラと…。
そして目の前には夜空が…。
星はまだ、それほど輝いていなかった。
「あ…」
お父様が柵越しに下を覗き込み、私達を見つめる。
柵に掛けた握り締められた手の親指が上を向いている。
「遥、都貴君と楽しんでおいで」
そう、お父様の口が動いた。
その後ろでお母様の号泣する声が聞こえると少し胸が痛んだ。
きっと、泣き崩れているんだろう。
お父様は微笑むとクルッと後ろを向いてお母様の元へ行った。
「あー、良かった!!」
屋上より一つ下の階の部屋に私とトキさんはその網ごと入れられた。
そこにいたのは高橋さんやらその他、トキさんのお友達と思われる方とか…。
何だかいっぱいいる。
というか、ここの部屋、普通の会社なんだけど。
「土建屋、ありがとう!」
トキさんが頭を下げたのは人懐っこい笑顔を浮かべる男性。
「いやいや、俺の開発した落下防止ハンモックがお役に立てて良かった!!
な、父さん、見ただろ!!俺の開発したハンモック!!」
「あのなあ、本来はこういう事に使ったらダメだろ!!」
土建屋と呼ばれた人の父親らしき人が思いっきり彼の頭に拳骨をお見舞いした。
「…大学の友達で木野建設という会社の息子。
このビルも木野建設さんの持ち物で今日、貸してくださったんだ」
トキさん、怖い。
全てを計算尽くしていて、自分の人脈をフルに使っている。
果たして今回の使い方が正しいのかどうかわからないけれど。
「本当にありがとうございました」
トキさんがそのお父さんに頭を下げると
「もう二度と、こんな手を使っちゃ、ダメだぞ?
腹が立つのもわかるけどね。
…今井商事の娘さんも大丈夫?お腹に赤ちゃん、いるんでしょ?」
そのお父さんとお父様の感じがダブって涙腺が緩む。
「ほら!!藤野!!
よーちゃんが怖がって泣き出したじゃないか!!
お前のゲーム脳が生み出したストーリー…今回の騒動は本当にシャレになってないよ」
高橋が肘鉄を食らわせてきた。
「遥、ごめん」
トキさんは土下座までして謝る。
私は首を横に振ると
「違うの、そうじゃなくて」
私はここの社員さんから差し出されたタオルで涙を抑えると
「生まれて初めて、お父様の愛情を感じたの」
こんな茶番劇にお父様はわざわざ付き合ってくれて。
微笑んでくれていた。
「まあ、ウチと今井商事さんを比べるなんていうのは間違っているとは思うけどね。
お父さん、本当に大変だと思うよ。
会社が大きければ大きいほど、そこに働く人の生活も背負うわけだからね。
家族は後回しになっちゃったんだろうね。
それはよくわかるよ。
それこそ家の事はお母さんに全て任せた結果…。
こういう事になったんだね。
本当はそれなりの家柄の人を、って思ったのかもしれないけれど。
それ以上に藤野君の才能が凄かったからお父さんも諦めたのかもしれないし、彼なら自分の娘を幸せに出来ると思ったからこういう事に付き合ったのかもね」
土建屋さんのお父さんは更にこう言った。
「ウチの息子も藤野君の3分の1でいいから才能があればなあ…。
俺の会社、もっと安泰なのにさ~」
社員の皆さんが大爆笑していた。
「お…おい!!自分の息子に面と向かって言うか!!
藤野は特殊なんだよ!!」
「いやいや、普通の大学生」
トキさんの言葉に土建屋さんは目を見開いて
「お前のどこが普通の大学生だー!!」
ますます笑いが起こった。