それもまた一つの選択
「うわあ!!凄い!!」

服を適当に買って、スーツケースに入れて飛行機に乗り…。
レンタカー借りて来た場所は。
海の見えるホテル。
ここでとりあえず2泊3日。
海、入りたいけど遥には飛行機やら車での移動で疲れ果てたと思うのでここは我慢。
その代わり、このスイートの部屋には露天風呂付き。

「トキさん、何これ〜?こんな凄い部屋!」

遥のはしゃぎっぷりに驚くよ。
きゃあきゃあ言ってる。

「これを逃すと…旅行なんて行けなくなるから。新婚旅行の代わりに」

「そうなの?」

「うん、そうなると思う」

子供が生まれてしばらくはねえ。
で、俺が大学卒業する頃にはきっと。
旅行とか言ってられなくなると思う。
何となく…嫌な予感がする。

「トキさん!!」

遥は嬉しそうに手を広げた。

『抱っこ』の合図。

一度、家で冗談半分でこういう事をして以来。
スキンシップを取りたいときは遥がこうする。

「はいはい」

思わず笑ってしまった。
お腹には俺達の子供がいるのにね。
遥はまだまだ子供だ。

窓際にいた遥を抱っこして座り心地のよいソファーに座る。

「やっと、誰にも気を使わずに二人だけになれた」

俺はそう言うと遥の唇にキスをした。
ずっと。
ずっと願っていた。
二人だけで一緒に過ごしたいって。
門限もなく、自由に。
その自由がこの一瞬の事であったとしても。
願いはようやく叶った。

「トキさん、ここって星、見えるかな?」

もちろん。
俺は頷くと遥の目が輝く。

「そこの、露天風呂に入りながら見られる」

ここは海も空も。
良く見える場所。
だから遥との旅行にここを選んだんだ。
ずっと来たかった場所。

「トキさん、ありがとう」

遥に思いっきり抱きつかれた。
…顔面、胸で押しつぶされそう。
ちょっと…嬉しいけど苦しい…。
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