それもまた一つの選択
「体調、いかがでございますか?」

翌朝、結局遥は起きられず。
今日は海沿いをドライブする予定が結局キャンセル。
部屋でゆっくりと過ごすことにした。
食事は全て部屋に持って来てもらえるのでその点は助かった。

「ありがとうございます。…悪阻が酷くて今日はこちらで過ごさせていただきます」

今のところ、悪阻といっても吐く事もなく。
食欲旺盛な悪阻。

「お昼も宜しければお持ちいたしますので何なりとご用命くださいませ」

「ありがとうございます」

係の方が退出してからベッドの布団が動いた。

「私、悪阻じゃない!!」

怒ってる。

「トキさんのせいで起きられないの」

「その原因を作った悪い子は誰かな~?」

俺はベッドの上布団を捲る。
遥がぐったりとしたまま、キャミソール・ショーツで寝ている。

「お腹空いた、トキさん」

起き上がる元気はないのに、お腹は空くんだな。

「はいはい、お嬢様」

流石にベッドの上で食事は気がひけるので遥をお姫様抱っこして食事が置かれたテーブルに移動する。

「そのうち、お腹が大きくなってトキさんに抱っこしてもらえなくなるから今のうちにしてもらおー」

俺の首に遥は腕を回した。
そんな可愛い事を言われたらお腹が大きくなってもしてやるって思うね。

「トキさんが食べさせてよ」

どれだけ俺のせいにするんだよ。
苦笑いしか出てこない。

「遥はママになってもそんな事を言いそう」

「トキさんには絶対に言う」

ふーん、じゃあ俺は大きい子供と小さい子供を抱えるわけだ。
それは困るな。

「お腹空いた!早く、あーん!」

…俺は雛鳥に餌をやる親鳥か。
とはいえ。
遥には本当に弱い。

「はいはい」

スプーンでスープを掬い、口の中へ入れると遥の嬉しそうな顔!

それを見ると全てを許してしまう。
ワガママも何もかも。

「遥」

モグモグと口を動かしながら俺を見つめる。

「俺、遥の事、世界一好きだ」

遥、そんなに目を丸くしないでくれ。
そんな驚く事か?
何度も言ってるけど?

「トキさん、私も大好き。
私達がおじいちゃん、おばあちゃんになっても言い続けてね」

「…努力するよ」

結構、遥の理想は高いな。
頑張るよ。
それで遥が喜んでくれるなら。
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