それもまた一つの選択
「お世話になった先生もいるけど」
竹中先生を見つめる。
悲痛な顔をして、目に涙を浮かべていた。
「もう、こうなってしまっては周りにご迷惑を掛けるばかりです」
そう言って鞄から退学届を取り出す。
「あ…」
来た!!急にこみ上げてきた!!
このままここに居たら大変!!
私は隣にいるトキさんにそれを預けて慌てて席を立つ。
「今井さん!」
その瞬間、立ち上がったのは竹中先生と保健室にいる植田先生。
植田先生は前もって用意していたらしい、ビニール袋を取り出し、私のところに駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
竹中先生が私の背中をさする。
「…ごめんなさい」
今朝からずっと気分が悪かった。
「悪阻ね、ちょっと保健室、行こうか?」
植田先生と竹中先生が私を周りから見えないようにしてくれる。
「…理事長」
植田先生が大きくため息をついて
「今井さんの体に起こっている変化は…確かに周りにも影響を与えると思います。
でも、この時期に辞めたらこの学校も今井商事さんも名前に傷がつくと思います。
今井さん、病気で体調に波がある、という表向きの理由にして卒業まで保健室での授業を認めて貰えませんか?
あと少しで卒業なんです、こんなところで辞めてはいけない。
私が責任を持ちます」
吐き気で涙が出るし、それ以上に植田先生の言葉に涙が出る。
「ね、友達がいないなら尚更、それでいいでしょ?
私は今ここで今井さんが退学してしまうのは悲しい」
自分さえ辞めたら、解決すると思っていたのに。
「私、二人の事をずっと見てきたから。私も悲しい」
竹中先生もそう続いた。
「他の生徒に隠し通せるなら、その方が良い。
この時期、就職や大学入試を控えている生徒がいるし、影響を与えかねない」
他の先生もそう続いた。
「うーん…しかし」
校長はさすがに悩んでいる。
「前代未聞の話ですな」
とは教頭。
「もし…」
お父様が口を開いた。
「遥を卒業まで見ていただけるなら」
お父様はスーツの内ポケットから封筒を取り出した。
「これを学校側へ」
理事長が受け取り、中身を開けると、口をあんぐりと開いたまま絶句した。
「寄付です」
校長もその横から見る。
瞬きを数回して、停止した。
「では、これは私から」
トキさんも立ち上がって内ポケットから封筒を取り出し、その中の小切手を理事長に渡す。
「足りなければ、請求していただいて結構です」
トキさんの口からそんな言葉まで出るなんて。
「30億と…20億…」
校長の口から洩れた言葉にその場にいた教職員全てがそれぞれ、声を漏らした。
「お父様?トキさん?」
目に涙を溜めながら苦し紛れに声を上げると
「心配しなくていいよ、遥」
トキさんは私の頭を撫でる。
「さ、あとは大人達に任せましょう」
私は竹中先生と植田先生に連れられて保健室に向かった。
竹中先生を見つめる。
悲痛な顔をして、目に涙を浮かべていた。
「もう、こうなってしまっては周りにご迷惑を掛けるばかりです」
そう言って鞄から退学届を取り出す。
「あ…」
来た!!急にこみ上げてきた!!
このままここに居たら大変!!
私は隣にいるトキさんにそれを預けて慌てて席を立つ。
「今井さん!」
その瞬間、立ち上がったのは竹中先生と保健室にいる植田先生。
植田先生は前もって用意していたらしい、ビニール袋を取り出し、私のところに駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
竹中先生が私の背中をさする。
「…ごめんなさい」
今朝からずっと気分が悪かった。
「悪阻ね、ちょっと保健室、行こうか?」
植田先生と竹中先生が私を周りから見えないようにしてくれる。
「…理事長」
植田先生が大きくため息をついて
「今井さんの体に起こっている変化は…確かに周りにも影響を与えると思います。
でも、この時期に辞めたらこの学校も今井商事さんも名前に傷がつくと思います。
今井さん、病気で体調に波がある、という表向きの理由にして卒業まで保健室での授業を認めて貰えませんか?
あと少しで卒業なんです、こんなところで辞めてはいけない。
私が責任を持ちます」
吐き気で涙が出るし、それ以上に植田先生の言葉に涙が出る。
「ね、友達がいないなら尚更、それでいいでしょ?
私は今ここで今井さんが退学してしまうのは悲しい」
自分さえ辞めたら、解決すると思っていたのに。
「私、二人の事をずっと見てきたから。私も悲しい」
竹中先生もそう続いた。
「他の生徒に隠し通せるなら、その方が良い。
この時期、就職や大学入試を控えている生徒がいるし、影響を与えかねない」
他の先生もそう続いた。
「うーん…しかし」
校長はさすがに悩んでいる。
「前代未聞の話ですな」
とは教頭。
「もし…」
お父様が口を開いた。
「遥を卒業まで見ていただけるなら」
お父様はスーツの内ポケットから封筒を取り出した。
「これを学校側へ」
理事長が受け取り、中身を開けると、口をあんぐりと開いたまま絶句した。
「寄付です」
校長もその横から見る。
瞬きを数回して、停止した。
「では、これは私から」
トキさんも立ち上がって内ポケットから封筒を取り出し、その中の小切手を理事長に渡す。
「足りなければ、請求していただいて結構です」
トキさんの口からそんな言葉まで出るなんて。
「30億と…20億…」
校長の口から洩れた言葉にその場にいた教職員全てがそれぞれ、声を漏らした。
「お父様?トキさん?」
目に涙を溜めながら苦し紛れに声を上げると
「心配しなくていいよ、遥」
トキさんは私の頭を撫でる。
「さ、あとは大人達に任せましょう」
私は竹中先生と植田先生に連れられて保健室に向かった。