まほろば
水仙閣
わたしは、妙子に拉致されるように水仙閣を訪ねてきました。
前日、妙子から電話があったのです。
「水仙閣に明日行くのだけど、紀子も来ないかな?」
・・・水仙閣って美紗子さんのところだよね・・・
「あそこの温泉はすごくいいよ」
・・・敬一さんのところか・・・
「紀子、聞いてる?」・・・うん・・・?・・・
「あ、ごめん聞いてるよ」「温泉か・・・いいかも」
「泊まりだから、家の方には言っておいてね」
・・・泊まり?・・・
「泊まりって、この時期に部屋が空いてるの?」
「部屋なんて空いてないよ、この時期は予約で満室だからね、自宅の方に泊まることになる」
・・・え? 自宅にお邪魔するの・・・
「自宅って・・・家族のいる所だよね?」・・・敬一さんも当然いるよね・・・
「気にしなくても大丈夫だよ、みんな良い人だし、私なんてよく泊まりに行ってるよ」・・・そこは同じじゃないでしょ、妙子は親戚なんだし・・・
「妙子は気にしてないかもしれないけど、わたしは敬一さんに変なところ見られたくないし」
「・・・・・・」・・・?・・・
「妙子? どうかした?」
「紀子、絶対来て、腹心の友なのでしょ」・・・なぜここで、腹心の友がでるのよ・・・
「わかった」
「じゃ 明日、迎えに行くね」
水仙閣は、町の外れにある山のすそにあります。
建物は、大正の頃に建てられた二階家と平屋が連なった建物です。
近年、耐震工事がされたようです、まぁリフレッシュ工事ですね。
ここの自慢は、自前の源泉を持っていることです、源泉掛け流しなのです。
温泉は噴出湯量が多いので、湯治宿を離れたところに作ったことで、全国から多くの人が長期で滞在しにきます、お正月や連休などでは、湯治客の家族が水仙閣に宿泊するようです。
年間を通じてほぼ予約が入っていると聞きました。
町には目立った観光地も史跡もないので、唯一の集客施設になってしまっています。
妙子とふたり玄関を入りました。
「妙子ちゃん、いらっしゃい、紀子さんもお久しぶりね、いま忙しいので、母屋で落ち着いてて、また後でね」・・・美紗子さん、あらためて見ると、確かにマドンナだな、きれいな大人だね・・・
「はい、じゃ美紗子お姉さん」・・・お姉さん! 妙子はそう呼ぶのか・・・
「お世話になります、美紗子お姉さま」・・・しまった、さまじゃなかった・・・
「紀子ちゃん、緊張しなくてもいいよ、ゆっくりして行ってね」・・・おぉ、紀子ちゃんに昇格したみたい、なんか嬉しいね・・・
わたしは妙子の後をついてゆきました、水仙閣は何度か来たことはありましたが、自宅は初めてです。
旅館とは渡り廊下でつながっています、旅館側からも行けますが、旅館を回りこんで自宅の玄関の前まできました。
「紀子、上がらしてもらってリビングで待ちましょう」・・・なんかドキドキするな・・・
妙子の家と親戚以外の家には、あまり上がり込んだことがなかったので、少し緊張してきました。
やっぱり来るんじゃなかった、と後悔しています。
「紀子、今日呼んだのはね、啓一さんが明日、東京に戻るからなの」・・・戻るんだ・・・
「そうなの」・・・冬休みも、もうすぐ終わるよね・・・
「そんなわけで、啓一さんの送別会することになってるの」・・・送別会って、永遠の別れでもないでしょ・・・
「なんか、変だよ、家族で送別会なんてしないでしょ」
「紀子らしくない返答ね」・・・わたしらしくない?・・・
「紀子は何時も帰宅する前に私に向かって、ダイアナ、ふたりが闇に包まれても、ふたりの想いが同じなら必ず明るい夜明けが来るって」
「送別会と歓迎会も同じようなものでしょ」「行ってらっしゃい、とお帰りなさいだよ」
「そうだね」・・・妙子が言うとおりかもしれない、最近少し何かが変わった気がする・・・
「そういえば、ここしばらく私のダイアナが返事してくれなくなったの」
「ダイアナって紀子のまほろばに居るダイアナ?」
「何度も呼ぶのだけど、出てきてくれない」
「ふぅ~ん、そうなの」・・・なに、その ふぅ~ん って、気になるじゃない・・・
前日、妙子から電話があったのです。
「水仙閣に明日行くのだけど、紀子も来ないかな?」
・・・水仙閣って美紗子さんのところだよね・・・
「あそこの温泉はすごくいいよ」
・・・敬一さんのところか・・・
「紀子、聞いてる?」・・・うん・・・?・・・
「あ、ごめん聞いてるよ」「温泉か・・・いいかも」
「泊まりだから、家の方には言っておいてね」
・・・泊まり?・・・
「泊まりって、この時期に部屋が空いてるの?」
「部屋なんて空いてないよ、この時期は予約で満室だからね、自宅の方に泊まることになる」
・・・え? 自宅にお邪魔するの・・・
「自宅って・・・家族のいる所だよね?」・・・敬一さんも当然いるよね・・・
「気にしなくても大丈夫だよ、みんな良い人だし、私なんてよく泊まりに行ってるよ」・・・そこは同じじゃないでしょ、妙子は親戚なんだし・・・
「妙子は気にしてないかもしれないけど、わたしは敬一さんに変なところ見られたくないし」
「・・・・・・」・・・?・・・
「妙子? どうかした?」
「紀子、絶対来て、腹心の友なのでしょ」・・・なぜここで、腹心の友がでるのよ・・・
「わかった」
「じゃ 明日、迎えに行くね」
水仙閣は、町の外れにある山のすそにあります。
建物は、大正の頃に建てられた二階家と平屋が連なった建物です。
近年、耐震工事がされたようです、まぁリフレッシュ工事ですね。
ここの自慢は、自前の源泉を持っていることです、源泉掛け流しなのです。
温泉は噴出湯量が多いので、湯治宿を離れたところに作ったことで、全国から多くの人が長期で滞在しにきます、お正月や連休などでは、湯治客の家族が水仙閣に宿泊するようです。
年間を通じてほぼ予約が入っていると聞きました。
町には目立った観光地も史跡もないので、唯一の集客施設になってしまっています。
妙子とふたり玄関を入りました。
「妙子ちゃん、いらっしゃい、紀子さんもお久しぶりね、いま忙しいので、母屋で落ち着いてて、また後でね」・・・美紗子さん、あらためて見ると、確かにマドンナだな、きれいな大人だね・・・
「はい、じゃ美紗子お姉さん」・・・お姉さん! 妙子はそう呼ぶのか・・・
「お世話になります、美紗子お姉さま」・・・しまった、さまじゃなかった・・・
「紀子ちゃん、緊張しなくてもいいよ、ゆっくりして行ってね」・・・おぉ、紀子ちゃんに昇格したみたい、なんか嬉しいね・・・
わたしは妙子の後をついてゆきました、水仙閣は何度か来たことはありましたが、自宅は初めてです。
旅館とは渡り廊下でつながっています、旅館側からも行けますが、旅館を回りこんで自宅の玄関の前まできました。
「紀子、上がらしてもらってリビングで待ちましょう」・・・なんかドキドキするな・・・
妙子の家と親戚以外の家には、あまり上がり込んだことがなかったので、少し緊張してきました。
やっぱり来るんじゃなかった、と後悔しています。
「紀子、今日呼んだのはね、啓一さんが明日、東京に戻るからなの」・・・戻るんだ・・・
「そうなの」・・・冬休みも、もうすぐ終わるよね・・・
「そんなわけで、啓一さんの送別会することになってるの」・・・送別会って、永遠の別れでもないでしょ・・・
「なんか、変だよ、家族で送別会なんてしないでしょ」
「紀子らしくない返答ね」・・・わたしらしくない?・・・
「紀子は何時も帰宅する前に私に向かって、ダイアナ、ふたりが闇に包まれても、ふたりの想いが同じなら必ず明るい夜明けが来るって」
「送別会と歓迎会も同じようなものでしょ」「行ってらっしゃい、とお帰りなさいだよ」
「そうだね」・・・妙子が言うとおりかもしれない、最近少し何かが変わった気がする・・・
「そういえば、ここしばらく私のダイアナが返事してくれなくなったの」
「ダイアナって紀子のまほろばに居るダイアナ?」
「何度も呼ぶのだけど、出てきてくれない」
「ふぅ~ん、そうなの」・・・なに、その ふぅ~ん って、気になるじゃない・・・