恋するオフィスの禁止事項 〜エピソード・ゼロ〜
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それから1ヶ月が経った。
水野とは必要以上に距離を縮めることはせず、それでも指導係として徹底して厳しく指導していた。
彼女はそれに必死でついてきてくれるが、向こうからも俺について詮索をしたりはしてこない。
俺が理想としていた関係だ。
「ちょっと水野サーン」
会議の報告書を作らせていたとき、生活雑貨部門の入り口に、他部門の女性社員が三人顔を出した。
水野を呼んでる。
水野は顔を上げてそいつらを確認すると、ビクリと肩を震わせた。
「は、はい」
「今日部門ごとのミーティングするから会議室準備してほしいって頼んだよね?全然準備されてないんだけど?」
「・・・え?それなら、午後からだと聞いていたので、お昼休みに準備をしようと思っていたんですが・・・」
「はぁ?午後からじゃなくて、10時からって伝えたよね?」
「・・・いえ、午後からと・・・」
「10時からって言ったってば」
「・・・・」
この三人は、わざとこの部屋に聴こえるような声で水野を怒った。
水野は子犬のように縮こまりながら、手帳を開いて今日のスケジュールのページを出した。そこには「午後 会議」というメモ書きがしてある。