恋するオフィスの禁止事項 〜エピソード・ゼロ〜



「私、今の仕事がとっても楽しいです。そりゃあまだ慣れなくて皆さんを怒らせてしまうこともありますが、それはそれだと思っています。そのせいで仕事が嫌になるなんてことはありません」

「・・・なんで?普通嫌になるだろ。特にあんな、女同士の揉めごとに巻き込まれてんじゃ・・・辛くないのか?」

「辛くないです。桐谷先輩がいるので」


(──え?)


エレベーターの扉が開いた。

水野は微笑んだまま『開』ボタンを押して俺が出るのを待っていた。俺は動けなかった。


「先輩?」

「・・・俺がいるから・・・何?」

「え?ですから、私、先輩がいてくれるので、仕事が楽しいんです。先輩の教え方ってすごいですよ。分かりやすいし、でもクイズみたいで・・・答えが分かると、なるほど!って思うんです」

「・・・」

「なるほど!って思うと、すごくワクワクします。知らないことをもっと知りたいって思うようになります。そしたらまた次の発見ができるような仕事を回して教えて下さって・・・。すごくよく考えて指導してもらってるんだなって感じてます。私、先輩の部下になれて本当に幸せです」

「・・・・・・・へ、へえ・・・」



──そんなこと言われたの、初めてだ。



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