恋するオフィスの禁止事項 〜エピソード・ゼロ〜



エレベーターが商品開発部のフロアに到着し俺が降りると、本部長もそこで降りた。

商品開発部の内部人事については本部長も考える立場にあるらしく、これから部長と話をしに行くのだという。行き先が一緒だと分かったため、向こうは話の続きを始めた。


「あ、そうだ。今回の異動でインテリア配属を希望している社員が一人いるんだけど、異例な子でね。エリア勤務だから本当は本部に異動になることはあまりないはずなのに、実績が認められたんだ。彼女は期待のホープだから本当は君に指導してもらいたかったなぁ」

「・・・うちに来る人もその人みたいな社員だといいんですけどね。でもエリアが本部に引き抜かれるほどの実績って、どんな実績ですか?」

「桐谷君がインテリア部門で進めてたキャンペーンがあっただろう?北欧家具の。それで表彰されたらしいよ」

「・・・・え、」

「だからなおのこと、君とは良いタッグを組めると思ったんだけどね。彼女本人がインテリアを希望しているみたいだから仕方ない」



あのキャンペーンで表彰された店舗勤務の社員は、一人しかいないはずだ。


「・・・水野旭、ですか?」

「あれ?やっぱり桐谷君も知ってたんだね」

「自分の商品で表彰された社員くらいチェックしてます。・・・彼女が商品開発部のインテリアに来るんですか?」

「まだ決まってないけどね。でもよっぽどのことがなければ希望は通ると思うよ」


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