クリスマスツリーの前で
凌ちゃんが怒るなんて、めずらしい。


やさしくて笑ってる凌ちゃんしか知らなかったから。
怒った顔、初めて見た。


「それなのに、恋人作ったら、もっと勉強が手につかなくなるんじゃないの?」


恋人? 


「私、恋人いないけど……」

不思議そうな顔で凌ちゃんを見つめる。


「昨日、ふたりきりで仲良く歩いてた人は?」


昨日? ああ、佐藤くんと絵の具買いに行ったところ、見てたんだ。


「文化祭の準備で、絵の具とか材料を買いに行っただけで、ただのクラスメイトだよ?」


凌ちゃんの表情が、少し穏やかになった。


「ほんとに?」

「うん」
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