虹のふもと
教室に入って席につくと、前の席の日和に声をかける。
「なー日和。」
「んー?」
日和がくるっと僕の方を向く。
「僕、サッカー部入るよ。
日和レギュラーとられないように
頑張れよ。」
ちょっと冗談めかしく言ったけど、
日和は真面目な顔して、
「やっとまたサッカーするんだ。
まじおせぇよ。」
ちょっと怒った感じで言った。
「やっとって?」
「太陽と昔1回だけ俺、試合したことあんの。
小学校入る前。
俺、それまでチームでいちばん上手くて
飛び級で小学生のチーム入って
それでもまあそこそこ上手くて、
でも、太陽のチームと対戦した時びびったよ
俺よりも小さい体で、そいつも小学生チームで誰よりも上手くて、
それでも一切妥協しない。
今でも覚えてる。太陽のプレー。」
日和は目を輝かせながら話してくれた。
昔の僕のこと。
なんだかとても嬉しかった。
「もしかして、そのときチームの人に
タイヨーって呼ばれてたから
最初、名前間違えたの?」
照れ隠しにちょっと話をずらす。
「そう!
タイヨーなんて呼んだら絶対間違えるだろ!
漢字が太陽だし!」
ちょっと拗ねてから、
「でもさ、やっぱぴったりだよ。
太陽にはその名前があってるし、
その漢字じゃなきゃだめだ。」
日和が眩しい笑顔で話すから、ちょっと前の僕なら目をそらしてたかもしれない。
でも、今はちゃんと向き合って僕も笑うことが出来る。
「ありがとう、日和。
こんどは、チームメイトとして頑張ろう。」
「おう!」
日和と握手を交わす。
日和にも、ぜんぶ話そうって思えた。
はるのおかげで、人を信じることが
できるようになったんだ。
だから、早く君に会って伝えたい。