【完】『雪の都』
vol.1
《1》
もう終わりにしないか…と不倫の相手である信藤隆康から鶴岡桜子が切り出されたのは、年に一度の豊平川の花火大会の夜のことである。
「実は妻にバレたらしくて」
こういうときの男ほど狡いものはない。
「だって、奥さんとは離婚するって言ったじゃない」
わざと周りに聞こえるように、花火の音の合間に桜子は少し大袈裟に反発してみせた。
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