【完】『雪の都』
《6》
その帰途。
桜子と薫はバスのなかで、いつもなら互いの出来事を他愛なく語らうのが、このときだけは口数も少なかった。
「深雪ちゃん、どうしたんやろな」
「…分からない」
桜子にはそれしか言えない。
深雪と大輔の関係の性質を何となく感づいていたであろう二人にとって、深雪の話題は話しづらかったのかも分からない。
薫は話題を変えた。
「そういや桜子って就活どうなってる?」
「…まだ決まらない」
これも話が続かない。