【完】『雪の都』


急に言われても、といったような風で薫は戸惑っていたが、

「急にごめんね、気にしないでいいから」

「…しんどいんか?」

薫は何かを感じ取ったのか気遣わしい言い方をした。

「…薫さんにかかるとバレバレだなぁ」

「何で?」

「母親がね、彼氏が出来たなら紹介しなさいって。でもこないだ薫さんの例の話を聞いたから、どうしようって」

「まぁ別にうちは何もないつもりやけど、世の中みんなそんな見方とは限らんしやなぁ」

桜子のオカンかぁ、と薫は仰ぐように時刻表を見た。


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