【完】『雪の都』

数日後。

薫は仕事の帰りに桜子と札幌駅で待ち合わせると、明日から始まるという雪まつりの雪像が並ぶ大通公園まで出た。

「薫さんは知らないかも知れないけど、前の日の夜がいちばん綺麗なんだよね」

桜子は子供の頃に父親に連れて来てもらったことがあるらしく、

「前の日の昼間はまだ自衛隊の人とかいるんだけど、夜になったら普通に見られるし、まだ始まる前でうるさくないし」

人混みが苦手な桜子らしい楽しみのように薫には思えた。

「でさ、明日の例のお見舞いだけど」

と桜子は切り出した。



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