【完】『雪の都』
《8》
翌朝。
ホテルをチェックアウトした桜子と薫は、札幌駅から桜子の母親の真奈美と落ち合って、小樽行きの快速の電車に乗った。
桜子からある程度は薫のことは聞いていたからか、
「関西弁って生ではじめて聞くけど、テレビのまんまなんだねぇ」
などと、はじめて珍獣でも見るようにしげしげと真奈美は薫を見た。
「ママ恥ずかしいから」
と露骨に嫌な顔つきで桜子は小声で袖を引いたが、
「まぁはじめてやろから」
などと薫は気に留める風もなかった。