【完】『雪の都』

しばらく四人は桜子と薫の子供の頃の話に興じていたが、

「薫、ちょっと真奈美さんと二人で話したいから」

なにやら桜子と二人で席を外してほしいらしい。

「あんまりきっついこと言うたらあかんでぇ」

そう言うと薫は桜子に目配せをして個室を出た。

「…もしかしたら、あの話なのかなぁ」

桜子は脳裡に例の薫の件が過った。

「オカン知っとるんか?」

「なんかネットで薫のことを検索してたのは知ってるけど、それ以上は…」

桜子には妙に不安がる面がある。

「そのときには最悪、駆け落ちしてでもうちは桜子とおる覚悟でおる」

それが責任や、と薫は毅然とした調子で言った。



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