【完】『雪の都』

深雪は薫のリーゼントを見て近寄って来た。

「高梨さん、久しぶりです」

「おー、久しぶりやねー。いつやったか駅でバッタリ会うたとき以来やんなぁ」

「桜子も元気?」

「うん」

という桜子の顔は浮かない。

「いやー、信藤支店長から飲み会の誘いがあったんだけど、振り切るの大変でさぁ」

続きを言いかけたときに、視線を感じたらしい。

彩が深雪をじっと見据えている。

薫はワインをぐいっとあおってから、

「すいませーん、ワインいただけますかー?」

とわざと遮るように大声を出した。

「桜子はワインどうする?」

「私は大丈夫。深雪は?」

メニューを繰り開きながら、

「えーと、白ワインかな」

深雪は空いていた隣の椅子を引き寄せて薫の隣に座り込んだ。



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